健康・医療

現役外科医が明かす「自分では避けたい手術」 直腸がんの肛門温存手術には再発リスク、食道がん手術は医師の腕の次第、予防的な白内障手術で見えにくくなることも

リスクの高い治療であれば、治療はしない方がいい(写真/PIXTA)
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脳の動脈瘤は見つかっても「治療しない方がいい」と話すのは石黒さんだ。

「破裂を防ぐために、動脈瘤のある血管にコイルを詰める『コイル塞栓術』を提案されることがありますが、副作用で脳梗塞になり、まひが残る人が一定数います。破裂する確率は平均1%以下と低いので、リスクの高い治療を受けるよりも、食事を見直したり、運動や肥満の改善など炎症を起こしにくい生活習慣を心がけるのがいいでしょう」

続いて南淵さんが受けないと話すのは「65才以上で、小さな傷で行う心臓弁の交換手術」だ。

「心臓弁を人工弁に置き換える際は、胸を大きく切り開いてよく見える状態で行うのが基本ですが、体への負担を減らすために、メスで切る範囲を小さくした手術を提案されることがあります。しかし、高齢になるほど手術中に想定外の事態が起きやすい。いざというときに対応できるように、傷口が大きい従来の手術を選んだ方がいい。

ある大学病院で70代の患者に小さい傷口の手術を行ったところ、人工弁が冠動脈の入り口をふさいで心臓が動かなくなり、最終的に亡くなる事故がありました。“高齢だから大きく切らない方がいい”というのが、すべての手術に当てはまるわけではありません」

胆石の手術を受けない選択は正解だったのかと悩むのは、都内在住のAさん(74才)だ。

「昨年胃が痛くなって病院で検査をしたところ、胆石があるから手術で取った方がいいと言われました。あまりに急な話だったので念のため別の病院に行ったところ、胃痛は胃が荒れているのが原因かもしれないと薬をもらったら治りました。胆石はすぐに手術する必要はないと言われて経過観察中ですが、本当に問題ないのか時々不安になります」

石黒さんは、手術をすすめる病院もあるがすぐに受けてはいけないと断言する。

「胆石ができるのは、肝臓から出てくる胆汁に原因があるからです。ただ石を取ればいいのではなく、胆汁の質を改善するために脂を控えるなど、生活習慣を見直すのが先。ひどい胆のう炎なら手術が必要なこともありますが、その場合は薬で治るような状況ではないので自然と手術が選択肢にあがるでしょう」

将来的に虫垂炎(盲腸)になったら困ると手術のついでに虫垂を取ることがあるが、これもNGだ。

「昔は、虫垂は取ってもいいものだと思われていたが、最近は腸内細菌の組成を決める司令塔の役割をしているといわれています。婦人科系の手術で取ることを提案されるケースがあるが、安易に受けてはいけません」(石黒さん)

病院経営のために無駄に行われている手術

手術を受けるなら、「神の手」を持つ医師に執刀してもらいたいと思うもの。しかし医師を腕で決めるのは、病状と手術内容によりけり。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんは、「“神の手”が行う人工膝関節置換術」は受けないと話す。

「人工関節の手術は難しくないので、5年の経験がある整形外科医なら誰が執刀しても結果は同じです。名医といっても、実際は手術の一部しか担当しないことがあり、予約待ちが数か月ということもある。私なら症例数の多い近所の市民病院で、適度な経験のある40代くらいの医師に、すぐ手術してもらいます」

戸田さんは「加齢に伴う変形性膝関節症に対する半月板形成術」「腰椎椎間板ヘルニアの緊急手術」は、すぐに手術するのは避けた方がいいと続ける。

「膝の痛みで病院に行って、半月板が損傷しているからと手術をすすめられた場合、その場で決断してはいけません。セカンドオピニオンを受けましょう。手術しても再び痛み出して、結局は人工関節の手術が必要になる可能性が高い。

腰椎椎間板ヘルニアも激痛を感じることが多いが、免疫細胞がヘルニアを攻撃してくれるので3か月ほど様子を見れば自然とよくなります。ただ、排尿や排便を調節する神経がまひした場合や、足や首が動かない場合は手術をした方がいい」

「名医」「神の手」と呼ばれる医師を盲目的に信じてはいけない(写真/PIXTA)
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保険が適用されない「座骨神経痛に対するレーザー手術(PLDD)」も慎重に判断したい。

「メスを使わずに日帰りでできるのは利点ですが、自由診療です。100万円以上かかることがあり、万が一医療事故が発生しても、公的救済制度が充分受けられないことがある。座骨神経痛では保険適用の治療が15万円程度で受けられるので、リスクを冒すメリットはありません」(戸田さん)

自由診療以外でも、病院経営のために無駄に行われている手術はある。

「代表的なのは『痔の手術』。痔は食事や生活習慣を含めた排便に問題があることが多く、そこを見直して治療するのが先決です。根本的に治さないと、手術をしてもまた痔になってしまう。

予防的に行われる『白内障の手術』もやめた方がいい。すでに視力に影響が出ているなら手術で症状が改善されますが、予防的に手術をすれば、かえって見え方が悪くなって不便をきたします」(石黒さん)

多くの患者を診てきた南淵さんが、「医師として専門外だが」と前置きしたうえで受けたくないと話すのは「脊椎管狭窄症の手術」だ。

「うまくいった人もいるでしょうが、患者さんから“受けても改善しない”“むしろ悪くなった”という声をよく聞きます。

『インプラント』治療も同様で、費用が高く、顎の骨が少なくてインプラントに耐えられず、顎骨にひびが入ったというトラブルも少なくないようです。前歯から奥歯まですべてを一本化した『オールオン4』もありますが、すべてインプラントなら入れ歯でいい。知ってほしいのは、どんな治療にも必ずデメリットがあるということ。万が一の事態が起きたときに、結果を受け入れられるだけの理解をしておくことが大事です」

どんな手術を受けるかは、あくまで患者が決めるもの。なぜその治療が必要なのか、問題点はないのかをしっかり考えて選択しよう。

※女性セブン2025年7月3・10日号