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《静岡発!高齢者のディスコイベントも》「介護施設で演奏し続けてきた」吟詠家の前田健志らが静岡市市長と意見交換会

宮﨑特任研究員がダンスと健康について解説
写真6枚

また、高齢者の健康増進の新しい形として「ロマンディスコ」も紹介された。仕掛け人は静岡市で介護福祉士かつDJとして活躍する大滝亮輔さん。介護と音楽の経験を生かし、介護施設などで高齢者向けのディスコイベントを主催している。キラキラの光に彩られた非日常空間に昭和から令和のヒット曲が流れ、高齢者は一緒に歌ったり、ペンライトを振ったり。即興でダンスに挑戦したりもする。スクリーンには静岡市の昔の街並みや、若い頃の自分たちの姿が投影され、高齢者からは「昔を思い出して泣いてしまった」「20才若返った」などの反響が寄せられるという。

介護施設の職員からは「仕事を忘れて楽しめた」との声も上がり、大滝さんは「介護する側の気持ちもほぐれるような催しにできたら」と語る。高齢者主体で健康増進が語られがちだが、介護する人や家族のメンタルヘルスなど、その人を取り巻く“環境”も含めて健康を捉える必要があるだろう。意見交換を通じて、意識が広がる結果ともなった。

顔色がパッとよくなるんです

大滝さんとコンビでロマンディスコに取り組むのは、RIP SLYMEのSU。普段の音楽活動とは違う世代と接し、「おじいちゃん、おばあちゃん世代は、昔のことをかなり鮮明に覚えていらっしゃる。音楽や昔の街並みの映像などで記憶が呼び起こされて、ロマンディスコのひとときは気持ちが若い頃に戻っていかれる。心が華やいで、顔色がパッとよくなるんです」と、音楽とダンスの力を再発見していると語った。

新たに「健康一番プロジェクト」サポーターに就任した吟詠家で尺八奏者の前田健志は、「介護施設のディスコがあんなに盛り上がるなんて!」と、ロマンディスコの活動に大きく賛同し、こう続けた。

「僕自身、多くの介護施設で尺八や唄を届けていますが、言葉がしゃべれなくても必ず音楽には反応が返ってきます。詩吟であれば、身体的にダンスが難しい方がたにもきっと楽しんでもらえる。愛好家には90代も多く、覚えた唄を声に出すことで、認知機能にもいい影響が望めますし。ぜひ、大滝さんやSUさんとコラボして、“ダンス×音楽×アート”をミックスしていけたらと思いました」

東京や海外をマネするのではなく

静岡県富士宮市出身の前田の言葉に、難波市長も笑顔に。「静岡市もいろいろな取り組みをしていますが、“市が”ではなく、“社会の力と共に”静岡市民の幸せを考えていくことが大切だと、痛感しました。皆さんが活動しやすくなる環境を整えながら、市民の幸せを創出していきたい」と、述べた。「健康一番プロジェクト」サポーターで国際的に活躍するダンサーのMaasaもまた、「ダンスの可能性について見識が広がりました。どうやったら、それぞれの分野で手をつないでいけるか、考えていきたい」と意欲を見せた。

静岡市で行われた「健康対策キックオフミーティング」ということで、「東京や海外をマネするのではなく、静岡らしいロケーションや土地柄をベースに、高齢者の健康促進に役立てたら」と抱負を述べた、大滝さん。静岡から全国へ――。力を結集して新しい風を吹かせたいと、参加者の心がひとつになった。