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《税金をゼロに近づける方法》「非課税世帯でなくでも住民税は減らせる」「相続税対策になるリフォーム」フル活用すべき控除や制度…賢いワザ13を解説

控除や制度をフル活用すれば税金を減らすことができる(写真/PIXTA)
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必死に働いて稼ぐほど所得税を取られ、どこに住んでも10%の住民税を取られ、亡くなれば相続税を取られる。生きているだけで次々取られていく、この「税金」さえなければもっと暮らしが楽になるのに……そう思うなら、自力で“減税”を。使える控除や制度をフル活用すれば、どんどん「ゼロ」に近づけられる。

8月4日、厚労省の審議会で過去最大の最低賃金の引き上げ目安(全国平均で1118円)が開示された。実現すれば全都道府県の最低賃金が時給1000円を超える見込みだ。

だが、賃金が増えても、相次ぐ増税で〝引かれるお金〟が増え続けている以上、手取りはなかなか増えず、生活が楽になることもない。暮らしを守るためにいますべきことは、税金を自分で減らして、できる限り「ゼロ」に近づける“じぶん減税”。多くの人が見逃している減税のチャンスはそこここに転がっているのだ。

保険料と医療費は使える控除だらけ

まずは手取りに直結する「所得控除」を増やし、節税しよう。税理士の西原憲一さんが解説する。

「2025年の税制改正では、所得税の年収の壁が103万円から160万円に増やされたほか、19才以上23才未満の特定親族を対象とした『特定親族特別控除』が新設されるなど、手取りを増やしやすい制度が整ってきています。それらとあわせて生命保険料控除や医療費控除などを活用すれば、所得税を大幅に節税することにつながるでしょう」

まず知っておくべきなのが「保険料」の控除。【1】「生命保険料控除」のほか、「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」があり、会社員なら年末調整時に申請すれば控除できる。

「いずれも、民間の保険会社に支払った保険料に応じて控除され、上限はそれぞれ4万円です。つまり、3種類すべての保険に加入していれば、最大で12万円もの所得控除が受けられます」(西原さん)

保険料控除と同じく多くの人が使わず損しているのが【2】「医療費控除」だ。1年間で払った医療費が10万円(総所得200万円未満ならその5%)を超えると還付され、その対象は驚くほど幅広い。税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが言う。

知らないと損する「医療費控除」
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「基本的に医師の診断を受け、治療のための出費であれば、メガネや介護用おむつ、マッサージの費用なども控除されます。補聴器も医師の診断書を持って認定補聴器専門店で購入すれば対象に。

人間ドックは対象外ですが、検査で病気が見つかり、治療に進んだりすれば対象です。検査を受けた項目のうち1つでも対象になれば、検査費用の全額が控除されます」

病院に行かなくても、市販薬の購入費用が控除される【3】「セルフメディケーション税制」で節税できる。

「人間ドックや予防接種を受けているなど、一定の条件を満たしていれば、薬局で治療目的の市販薬(OTC医薬品)の購入費用が年間1万2000円分以上だと、超えた分が控除されます。ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできないので要注意です」(板倉さん)

生命保険料控除とは違い、医療費控除やセルフメディケーション税制は還付申告が必要だ。

対象と気づかない人が多い年金「配偶者控除」

会社員の場合、仕事にかかわる支出は【4】「特定支出控除」が適用される場合が多い。通勤費のほか、出張のための交通費や宿泊費、研修費、資格取得のための費用、制服代、交際費などを自己負担した場合は、確定申告で所得控除される。

退職金にも「退職所得控除」がある。

「【5】退職前に勤め先に『退職所得の受給に関する申告書』を提出すると、退職所得控除を差し引いた金額のさらに半分の額に課税されるようになります。提出しなかった場合は確定申告で精算できるものの、いったん退職金の収入金額に約20%の所得税と10%の住民税がかかります」(西原さん)

所得控除は賃金だけでなく年金にもあることを知らない人が多いと話すのは、税理士の山本宏さんだ。

「【6】」年金の配偶者控除では、妻の年間所得(収入から各種控除などを引いた額)が58万円以下なら『配偶者控除』、それを超えても年間133万円までなら『配偶者特別控除』が適用されます。

「働きながら年金受給」は控除対象がプラス10万円
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妻の年金が多いと夫の扶養から外れるというのは間違いで、年金には110万円の公的年金等控除もあります。かなり多くの人が年金の配偶者控除の対象になっていることを知らず、損している可能性があるのです」

年金は5年遡って還付されるので、年金事務所から送られてくる書類で申請すれば取り戻すことも可能だ。

一方、働きながら年金を受給している場合は、年末調整時に【7】最大10万円の「所得金額調整控除」が適用される。過去の改正において給与所得控除と公的年金等控除が10万円引き下げられたため、重複して引き下げられた人への補?として、最大10万円の調整控除が新設されたのだ。山本さんが試算する。

「例えば、65才女性で年金収入が年200万円、給与収入が年220万円の場合、年金は受給額から公的年金等控除の110万円を引いた90万円が所得となります。また、220万円に対する給与所得控除額を計算すると74万円になるので、これを引いて146万円が所得。年金と給与の合計236万円から、所得金額調整控除の10万円を引いた226万円が税制上『所得』と見なされ、所得税はこの金額で計算されます」

「非課税世帯」でなくても住民税は減らせる

所得税率は所得によって変わるが、住民税は所得にかかわらず10%。扶養控除や寡婦控除などを利用すれば、その分税金を減らすことができる。

「【8】年金収入168万円以下のみ(65才未満は118万円以下)の親と同居、または仕送りをしている場合、扶養控除が適用されて住民税を下げられる場合があります。また、配偶者と死別または扶養家族を抱えて離婚すると『寡婦控除』が使えることを知らない人は多い。離婚や死別し、合計所得金額が500万円以下なら対象です」(板倉さん)

前出の医療費控除や所得控除とあわせてフル活用して税制上の所得を減らせば、収入状況によっては住民税非課税世帯になり、住民税を文字通り「ゼロ」にできる可能性もある。

「65才以上なら世帯主の年金収入が211万円以下で配偶者の年金収入が155万円以下なら住民税非課税となるので、夫婦で366万円未満の収入だと、非課税世帯と見なされます」(山本さん)

扶養控除や寡婦控除などを利用すれば税金を減らすことができる(写真/PIXTA)
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【9】公的年金の受給を繰り下げて収入をなくし、住民税非課税世帯になるのもひとつの手。住民税非課税世帯になると、国民健康保険料や医療費の負担軽減、給付金の受給、公共料金の割引なども受けられる。

「ただし、住民税非課税世帯になろうと公的年金を繰り下げれば後々受給額は増えるので、受給開始後は非課税から外れる可能性が高い上、繰り下げ受給前の生活費を賄えなくなっては本末転倒。充分な貯蓄がある場合に初めて検討できる方法です」(西原さん)

働いているなら、【10】「iDeCo」を活用して住民税を減らす方法もある。2022年5月の法改正により、65才までは新規加入と掛け金の拠出ができるようになっている。

「主婦などの月々の掛け金の上限は2万3000円なので、60才から加入しても5年間で138万円拠出でき、これが全額所得控除され、住民税も安くなります。所得が195万円以下なら所得税と住民税は合わせて15%なので、138万円の15%、すなわち20万7000円もの節税になる。iDeCoは老後資金づくりの手段として注目されがちですが、節税のメリットも大きいのです」(山本さん)

一方、人気のふるさと納税には、節税効果はない。

「任意の自治体に寄付した金額が本来の納税額から減額されるだけ。減税されるわけではないので、出て行く金額は変わりません。ただし、寄付金額に応じた返礼品がもらえるのでお得であることは間違いありません」(板倉さん・以下同)

相続税対策には「リフォーム」が一石二鳥

自分が亡くなった後は、財産を相続する子供や孫に「相続税」がかかる可能性がある。手っ取り早く相続税を減らすには、【11】生命保険金の控除が使える。法定相続人1人につき500万円まで非課税になるので、相続人3人なら1500万円、4人なら2000万円分の節税だ。それ以外では【12】「元気なうちに財産を減らしておくこと」に尽きると、板倉さんは言う。

「財産を減らす方法は大きく3つ。子供や孫に贈与するか、自分で使うか、評価額を変えるかです。贈与には贈与税がかかる場合がありますし、不動産の購入は評価額を減らす効果は大きい一方、値下がりで“負動産”になるリスクも大きい。それよりも、相続時に自宅の土地の評価額を8割減にできる『小規模宅地等の特例』の方がメリットは大きいでしょう」

ただしこの特例は、被相続人と同居しているなど、一定の要件を満たしていなければ使えない。また、【13】自宅のリフォームも効果的だ。

「きれいにリフォームしても、家の相続税評価額は原則変わりません。リフォーム費用の分だけ預貯金を減らしながら住み心地をよくすることができて一石二鳥です。さらに、住宅ローン減税やリフォーム促進税制などを利用すれば、所得税や固定資産税の節税にもつながります」

家計を圧迫する税金の中には、よくよく調べると「実は控除として引けるもの」は少なくない。損せず手取りを増やそう。

※女性セブン2025年9月4日号