《疲れない体づくりを極める》疲労に負けない体のための運動&食事法
現代人は戦略的かつ意識的に休養するべき! 精神的疲労がたまりやすい情報社会ならではの休養法と、そもそも疲れにくい体をつくるにはどうすべきか、医師の加藤浩晃さんに聞いた。
感動の涙は精神的疲労の解消に効く!
家族構成や働く環境が変わる中、疲労の質も変化したと、加藤さんは指摘する。
「絶え間なく情報が入ってくる現代は、肉体的疲労もさることながら、精神的な疲労が増しています」(加藤さん・以下同)
現代人は、休養するときもスマホで動画を見るなどして、常に情報にさらされていないと気が済まない傾向にある。これでは疲労を上乗せし、いつまでたっても解消されない。休養するにも“戦略”が必要になったという。
「睡眠は心身の疲労をとるのに重要ですが、ただ寝ればいいわけではなく、睡眠の質を高めるための環境を意識してつくる必要があります。大切なのは寝具。特に枕は、横向きになったときに、おでこから胸まで一直線になるのものがおすすめ。首への負担が少ないので呼吸がしやすいだけでなく、寝返りもうちやすいので安眠につながります」
精神的疲労をとるなら、睡眠以外にも、映画やコンサート、お笑いライブなどを見て、感情を揺さぶられる体験をするのもいい。
「特に泣ける映画を見て“感動の涙”を流すのがおすすめです。悲しみの涙と違って、ストレスを緩和する効果があるからです」
休日はあえて泣く時間をつくるのも、戦略的休養につながる。
疲れにくい体づくりは2週間続けること
疲れをとるには、休養のとり方だけでなく、疲れにくい体をつくることも大切だと、加藤さんは続ける。
「適度な有酸素運動と筋トレ、そして、栄養バランスのとれた食事で疲れにくい体はつくれます」
具体的な方法は上記を参考にし、最低でも2週間は続けよう。徐々に疲れにくい体になったと実感できるはずだ。
疲れにくい体のつくり方
《運動編》ウオーキングなど適度な有酸素運動をする

「激しい運動は、活性酸素を過剰に発生させて細胞や組織を傷つけ、老化や病気の原因をつくるだけでなく、疲労をためてしまいます。おすすめは、ウオーキングなど適度な有酸素運動を週2~3回、30分~1時間程度行うこと。血流が改善して疲労物質の代謝も進みます。平坦なコース、坂道のあるコースなど複数のコースを用意しておくと、飽きずに継続しやすいです」
《運動編》軽い筋トレをする

「筋力をつけることで基礎代謝が上がり、疲れにくい体がつくれます。年齢を重ねると、筋力は自然に落ちていきますが、逆に、何才だろうと鍛えれば筋力は必ずつきます。特に疲れが気になる人が、優先して鍛えるべきは大きな筋肉がある『下半身』。スクワットなら、効率的に筋肉量をアップできます」。
継続が大切なので、1日10回程度から、無理のない範囲で回数を増やしていこう。慣れてきたら、腹筋運動を追加し、上半身も鍛えてバランスをとると◎。
《食事編》血糖値の急上昇・急降下に気をつける

「血糖値の急激な上昇・降下は、体に負担をかけ、疲労の原因に。予防するには白米より玄米、普通のパンより全粒粉パンなど、糖質の少ない食べ物を選びましょう。白糖を控え、肉や野菜から先に食べるのもおすすめ」。コーヒーを飲む際も、甘いカフェラテなどではなく、ブラックを。甘味をがまんするとストレスになるので、適度に取り入れるのは◎。
《食事編》たんぱく質を意識して摂る

「疲労回復のため、特に意識して摂りたいのがたんぱく質です。日本人のたんぱく質摂取量は減少傾向にあり、終戦直後の1950年代レベルまで低下しているといわれています。たんぱく質は筋肉の材料となるので、疲れにくい体づくりのためにも意識して食べること」。成人女性の推奨量は1日50g。肉、魚、卵、大豆製品のいずれかを毎食摂るのが理想的。
《食事編》鉄分・ビタミンB群を意識して摂る

「鉄分やビタミンB群が不足すると、赤血球に含まれるヘモグロビンの合成がうまくいかず、体内への酸素供給が滞ります。すると、だるさや息切れ、めまい、動悸といった症状が起こり、疲労感が増します。特に女性はこれらの栄養素が不足気味。鉄分の多いレバー、赤身肉、まぐろ、小松菜や、ビタミンB群が豊富な豚肉、納豆などを積極的に摂りましょう」
◆休養学者・片野秀樹さん
博士(医学)、日本リカバリー協会代表理事。日本初の休養学者として各種企業研修、講演、健康経営関連セミナーなどを通じて疲労大国ニッポンを救うために活動中。著書に『休養学 あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)など多数。
◆作業療法士・菅原洋平さん
国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。現在は、ベスリクリニックで睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。著書に『「疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』(河出書房新社)など多数。
◆医師・加藤浩晃さん
専門は遠隔医療、AI、IoTなどのデジタルヘルス。元厚生労働省室長補佐で起業家でもある。医療現場、医療制度、ビジネスという3つの領域を経験し、現在は医療領域全般の新規事業開発支援などを行う。著書に『休養ベスト100 科学的根拠に基づく戦略的に休むスキル』(日経BP)など多数。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2025年9月18日号