《睡眠を極める》脳の疲れをとる夜の過ごし方
休養の要となるのは、やはり睡眠。ただし、長い時間寝ることよりも、質のよい睡眠をとることが重要だ。そのための方法を専門家に聞いた。眠れない夜にとるべき行動、とってはいけない行動とは? 脳の疲れをとる夜の過ごし方を紹介する。
起床時の心拍数で睡眠の質がわかる
睡眠不足になると頭の回転が鈍くなり、肉体的な疲労もたまりやすくなるため、質のよい睡眠を充分にとることは、疲労回復のために重要だ。どんな状態なら良質な睡眠をとれたことになるのか――。作業療法士の菅原洋平さんによると、心拍数が睡眠の質をはかる目安になると言う。
「健康な成人の安静時の心拍数は、1分間に60~100回ほど。寝ている間に脳は記憶を整理したり、肉体疲労の回復を行うのですが、それらの機能が正常に働いているときは、睡眠中の心拍数が安静時よりも低くなります。つまり起床直後の心拍数が低いのは、脳や体のリカバリー作業が正常に行われた証拠です」(菅原さん・以下同)
寝起きに脈を測る習慣をつけ、どのくらいの脈拍のときに熟睡を実感できるか知ることが大切だ。
寝ても疲れがとれないのは「脳疲労」が原因
質のよい睡眠がとれないと寝ても疲れがとれないわけだが、その原因として脳が疲れすぎて疲労がとり切れていない可能性がある。
「何もしていないのに疲れていたら、『脳疲労』の状態です。これが続くと、記憶力や集中力が低下し、時間感覚が狂ってきます」
脳を過度に疲れさせないためには、睡眠時間を増やすことよりも、起きているときの行動が重要になる。
「脳は予想外のことを処理するときにエネルギーを多く使います。ですから、やるべきことが頭に浮かんだら『○○する』と声に出し、行動を前もって脳に認識させましょう」
インターネットやSNSなどの情報を頭に入れるのも、脳に膨大なエネルギーを消費させるため、スマホと一定時間、距離をおいてデジタルデトックスをするのもおすすめだ。
正しい休養のための睡眠法
ベッドにスマホを持ち込まない

「脳は場所と行為をセットで記憶します。ベッドでスマホを操作すると『ベッド=脳を刺激する場所』と覚え、寝る場所だと認識しなくなります。スマホは脳疲労を助長させますから就寝前は手放すのがおすすめ」
眠くならないうちに布団に入らない

「布団に入って15分経っても眠れない場合、脳の仕組みとしてその後1時間は眠れません。焦ると余計に眠れなくなくなるので、一度起き上がり、眠気が来るのを待つ方が効率的」
就寝直前にソファでうたた寝をしない

「人は起床直後から、脳脊髄液の中に睡眠物質を蓄積します。それがたまるほど睡眠の質が高まるので、就寝前にうたた寝をして、たまった睡眠物質を消費すると、本格的に寝ているときの睡眠の質が下がります」
就寝前にホットアイマスクをする

「目の周りを温めると心拍数が下がります。就寝前の心拍数が下がれば寝つきがよくなるうえ、睡眠中の心拍数もそのまま下がるので、質のよい睡眠をとりやすくなります。ですから就寝前にはホットアイマスクを」
目覚めたら日光を10分浴びる

「起床後すぐ、窓から1m以内で10分ほど日光を浴びると◎。網膜で光を感知すると幸せホルモン・セロトニンが活性化し、眠気を起こすメラトニンの分泌を抑制。体内時計が整い、14~16時間後にメラトニンの分泌量が増加すると自然と眠くなります」
休みの日に寝だめしない

「平日と休日の起床時間がずれると、脳は疲れやすくなります。休日だからと寝だめせず、平日との起床時間の差を2時間以内にし、なるべく起床時間を一定にすることが大切」