
運動に自信がない人でも気軽に始められるウオーキング。だが残暑が続くいま、ウオーキングに出かけるのはしんどい。そんな人に、何才でも、いつでもすぐに始められるのが「自宅ウオーキング」。作業療法士に効果の上がる歩き方を聞きました!
自宅で歩いて寝たきりを防ぐ
高齢者に自宅でできる健康法を教えている作業療法士の荻野秀一郎さんは、「家の中で歩くことは、認知症予防に充分つながる」と話す。
「老化が加速したり、認知症になる人に多いのが、意欲をなくすことと計画を立てないことです。『今日は○○をしよう』と考えず、漠然と一日中テレビなどを見て過ごしていると、あっという間に心身ともに老化が進みます。
座っている時間を減らし、テレビを見ているときなどは足を動かし、家事を可能な範囲で行うことで自然に体を動かすことができます。
さらに、自宅の中でウオーキングを行えば、健康維持や生活習慣病予防にもつながります」(荻野さん・以下同)
1日2000歩歩くと寝たきりを予防できるとされ、5000歩以上で認知症や心疾患、脳卒中などのリスクが下がるというデータもあるという。(※2016年健康長寿ネット「健康長寿に効果的なウォーキング」より)
記者の母(92才)も洗濯や掃除が好きで家の中をよく歩き回っている。しかも、「寝たきりになりたくない」と、自宅の廊下(4mほど)を1日2回、5~6往復するなどしてなるべく歩数を稼ぐようにしているためか、いまも杖なしでスタスタ歩いている。
「まさに室内を歩くのが自宅ウオーキングです。長い動線がなくても、歩きやすいコースを考えて1回1分程度、ゆっくり歩けば健康効果がアップします。慣れてきたら距離やコースを変更したり、時間を増やしていくといいですね。
ただ、家の中には段差があったり、ソファや家具が置かれてたり、絨毯が敷かれていたりするため、つまずいたり、テーブルの角に指をぶつけるなど、けがや転倒のリスクもあります。いきなり階段の上り下りなどをコースに入れず、まずは障害物の少ない部屋や廊下を歩いたり、その場で足踏みをしてみましょう。足腰に自信がない場合は、椅子などにつかまりながらでOKです」
次からは、記者の母が実践中の自宅ウオーキングを例に、荻野さんが正しい歩き方をアドバイスする。
自分の足で長く歩く自宅ウオーキングメソッド
記者の母が行う実例をもとに、荻野さんが歩き方や注意点などを解説。「歩く際は、段差や障害物が少ない平坦な場所を選びましょう」(荻野さん)。
誰でもできる足踏みトレーニング
「歩くのがしんどい」「家に歩くスペースがない」などの場合は、「足踏みをしましょう」と荻野さんはすすめる。
「自宅で足踏みをするだけでも、足の筋肉を大きく動かせるため、全身の血行促進や代謝向上につながります。約5分行うと500歩程度歩いたのと同等の効果が得られます。5分間続けるのが大変であれば、1分から始めてください。毎日、気づいたときに行い、1回1分を何回かに分け、トータルで1日5分程度行うといいですね」(荻野さん)
【注意点】
・ふらつく場合は、椅子などにつかまって行う
・体調がすぐれない場合は無理して行わず、自分のペースで行う
・痛みが出る場合は中止する
【その場で足踏み】
平らな場所に立ち、ゆっくり足を高く上げ、20〜30回足踏みを行う。足がすべらないようにスリッパは脱いで行うこと。

足踏みの際は、姿勢を正し、腕を大きく振り、足を高く上げる。慣れてきたら足の上げ下げを少し早くする。
もも裏の筋肉を使う足踏み
かかとを上げて足踏みをする。もも裏の筋肉を鍛えるため、かかとがもも裏の近くまで上がるように意識し、左右交互に20〜30回繰り返す。痛みが出る、ふらつくなどの場合は、すぐに中止しよう。

姿勢を正し、腕を振り、かかとをお尻になるべく近づけるように意識する。
バンザイしながら足踏み
足踏みに上半身の動きを加えて代謝を上げる運動。右足が床についているときは右腕と左足を上げ、左腕は曲げる。反対も同様に。足踏みをしながら交互に繰り返す。腕はまっすぐ上げるよう意識して。

姿勢を正し、片腕をまっすぐ上げ、太ももを高く上げる。
自宅ウオーキングメソッド
ここからは1日の自宅ウオーキングのおすすめのやり方を紹介する。

《Point1》朝起きて足踏み

7時起床。目覚めたらゆっくり体を起こし、ベッドに腰をかける。座ったままで足踏みを20回行う。終わったら立ち上がり、足踏みを20回行う。
「ウオーミングアップも兼ねて朝の足踏みを行うと、体にスイッチが入り、動きやすくなります」(荻野さん・以下同)
《Point2》玄関まで歩く

着替えて身支度をしてから、玄関まで新聞を取りに行く。そのついでに新聞を持ったまま廊下を3〜5往復する。
「歩くときは背筋を伸ばし、前に出した足はかかとから地面につき、意識してつま先を進行方向に向け、つま先は上げすぎないよう注意して」
《Point3》「朝ドラ」を見ながら足踏み

日課の朝ドラのオープニング曲に合わせて、立って足踏みを行う。ドラマが始まったらソファに腰かけ、足踏みを続けながらドラマ鑑賞。
「座ったまま足踏みをするだけでも前ももの筋肉が働き、血流がよくなります」。
《Point4》キッチンとテーブルの間を往復

食事の時間にできるだけ歩数を稼げるように、料理を運ぶときは2〜3回に分けてテーブルまで運ぶ。食べた後の食器をシンクに運ぶときも、2〜3回往復する。余力があれば、食後は休むことなく廊下を1分程度歩く。
「食後の運動は血糖値の上昇を緩やかにするのでおすすめです」。
《Point5》洗濯機とベランダを往復

洗濯機からベランダまで約7〜8m離れているため、洗濯物を干すときも2〜3回に分けて運び、往復回数を増やして歩数を稼ぐ。
「ひざを高く上げるような歩き方を意識すると、さらに運動効果が高まります」

アメリカ発「モール・ウォーキング」のすすめ
「モール・ウォーキング」とは、ショッピングモール内を健康目的で歩くこと。アメリカ疾病予防管理センターが提唱し、1992年頃から知られるようになった。日本ではイオンモールが公式に推奨しており、全国142の施設に「ウォーキングコース」を設置。歩行距離や消費カロリーの目安をモール内に掲示している。

「買い物のついでに『モール・ウォーキング』をすれば、天候に左右されることなく安全な環境で快適に運動できるため時間も有効活用できます。休憩スペースもあるので、少し疲れたらすぐに休めるのもメリットです」(イオンモール広報担当者)
◆教えてくれた人:作業療法士・荻野秀一郎さん
YouTube「フラミンゴの介護予防チャンネル」(@yobouflamingo)にて高齢者向けに転倒しないための運動を配信。著書に『1日15分 健康ウォーキング』(高橋書店)。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年10月9日号