
くしゃみをしたり笑ったりするだけで尿漏れが、トイレが近くて旅行も楽しめない――。加齢とともに現れる尿漏れ、頻尿は病気でないけれど日常生活の質を落とす重大な悩み。その原因は骨盤底筋が衰えてしまっているから。骨盤底筋と腟を締めて緩めるトレーニングで、筋肉が鍛えられれば周囲に相談しにくい尿の悩みも、便秘も、ポッコリ出た下腹も、むくみも冷えも解消! 腟まわりの血行がよくなることで、女性ホルモンの分泌が促され心身に“潤い”ももたらします。

《メカニズム》女性ホルモン減少、妊娠・出産、体重増加でガタガタに…体の土台となる「骨盤底」の衰えは身体機能の不調に直結
自分ではなかなか意識しにくい位置にある骨盤底。しかし、ここが衰え緩んでしまうと、あらゆる不調が生じ、歩けなくなることも。
女性の健康には骨盤底&腟が要
「骨盤底筋は体の土台となる骨盤底の重要な構成成分で、内臓を支え、姿勢を保ち、排泄機能をコントロールします」と話すのは、泌尿器科医の関口由紀さん。加齢とともに衰えるが、放っておくと歩けなくなることもあるという。

「骨盤底筋が伸びて緩むと、内臓が下がることで膀胱を圧迫して尿漏れや頻尿・排尿困難を招きます。また、腟も緩むため子宮や膀胱といった臓器が体外に出てしまう骨盤臓器脱を引き起こすリスクも高まるのです」(関口さん・以下同)

まずはあなたの「骨盤底」をチェック!
□おしりがたるんできた気がする
□腰が痛い
□下腹がぽっこり出てきた
□便秘気味
□片足で30秒以上立つことが難しい
□くしゃみをするときや笑うとき、尿漏れが気になる
□座っているとき、気づくと猫背になっている
□運動する習慣がない
□長時間座っていることが多い
□残尿感がある


診断結果
●チェック数が1~3個の人
骨盤底筋の衰えが始まっています。筋力維持やトレーニングを始めましょう。
●チェック数が4~6個の人
筋肉が伸び、緩み、衰えている状態です。放置すれば日常生活に影響も。
●チェック数が7個以上の人
衰えが進み、排泄機能も低下しているでしょう。早急に筋力回復が必要です。
骨盤底筋ってどこにある?
体の軸となるのが背骨と骨盤。骨盤底筋は骨盤の底にあるハンモック状の筋肉群で、皮下組織や靭帯、筋膜とともに「骨盤底」を構成し子宮や直腸、膀胱などを支え、排泄の機能を担う。

骨盤底筋が衰えると…
筋肉が伸びて緩むと腹圧(おなかの中の空間にかかる圧力)が過剰にかかって、排泄コントロール力の低下、姿勢の悪化をもたらす。
・血流やリンパの流れが悪くなり冷え、むくみ、便秘に
・臓器が下がり猫背が助長される
・膀胱が押され、尿道が締まらず尿漏れや頻尿に

骨盤底筋がよみがえると…
内臓が正しい位置に収まり、正しく機能するようになる。呼吸が正しくできるようになり体幹・姿勢が整って、尿漏れ改善が期待される。
・内臓をしっかりと支え、内臓機能向上、尿漏れや便秘解消も期待
・骨盤のゆがみを予防し、関節の痛み改善効果も

《コツコツと続けよう》「姿勢」を整え、毎日続ければ筋力アップ!「正しい座り方」をマスターして腟にグッと力を入れてトレーニング
いきなりトレーニングをして体を痛めてしまっては元も子もない。「事前準備」を日常で意識し、トレーニングの効果を高めよう。
座る姿勢が骨盤底筋を左右する
世界20か国を対象とした調査で日本人の座位時間は1日平均7時間で、最も長かった。1日のほとんどを座っているからこそ、その姿勢は骨盤底筋に大きな影響を与える。正しい姿勢で座らなければ、みるみる衰えてしまうのだ。
《骨盤を立たせる「正しい座り方」》

・背筋を伸ばして、頭から肩は一直線に
・あごは軽く引いて、目線は前に
・椅子の背には、寄りかからない
・ひざをつけて足をそろえる
・骨盤が立った状態になるように、坐骨※を椅子の座面に当てる
(※骨盤の底に位置する骨で、椅子に座るとお尻の下に触れる)
・足は地面につける
《骨盤底筋に負担「間違った座り方」》

・背中が丸まっている
・体の重心が左右どちらかに傾いている
・椅子に浅く座って、背もたれに寄りかかる
・足を広げたり、組んだりする
・骨盤を立たせずに寝かせた状態で、おしりや太ももで座る
絶対やるべきメインはコレ!「立ったままトレーニング」
《POINT》ひざを立てて寝た姿勢や、正しい姿勢で椅子に座りながら行ってもOK!
【1】背筋を伸ばして、姿勢よく立つ

【2】手をおなかとおしりにあてて、おなかとおしりが動かないように意識しながら腟と肛門をキュッと締める。

【3】【2】の状態のまま、息を吐きながら4~5秒かけて肛門と腟を体の中に引き込むようにグッと上に持ち上げる。

【4】息を吸いながら力を抜いて、リラックス。【1】~【4】を5セット。
骨盤まわりにある腸腰筋を鍛える「座りながらひざ開き」
【1】「正しい座り方」で椅子に座る

・あごは軽くひいて、目線は前に
・背筋は伸ばす
・坐骨を座面に当てて骨盤底筋を立たせて座る
【2】胸の前で手をクロスし、背筋は伸ばしたまま、足を床からゆっくり浮かす。

・腰に力を入れるのはNG
・ひざと太ももを上げることを意識
・足を浮かす
【3】足を浮かせたまま、5秒かけてゆっくりと両ひざを外側に開き、ゆっくりとひざを閉じる。その後、足を床に下ろす。【1】~【3】を5セット。

・ひざの開閉はゆっくりと
《日常生活ですぐできる》骨盤底を強化して一生寝たきりにならない、下半身の筋力強化トレーニング
起床後に、寝る前に、家事の合間に、体に負担をかけずに続けられる!骨盤底を強化して一生寝たきりにならない、下半身の筋力強化トレーニングを紹介する。
姿勢を正してチャレンジ「寝ながら足開き」
太ももの両外側にある外転筋は股関節の動きをよくし足を支える。足を開くことで刺激しよう。
【1】足を伸ばして仰向けになる。足首は垂直に立てて、手を胸でクロスする。

・あごは軽く引く
【2】右足を伸ばして床から軽く浮かせて、息を吐きながら5秒かけて外側に45度ほど開く。

・足はまっすぐ伸ばす
・上半身が傾かないように気をつけて
【3】ゆっくり息を吸いながら右足を元に戻し、左足も同様に行う。【1】〜【3】を左右3セットが目安。
股関節の深部にある筋肉を鍛える「寝ながらひざ開き」
【1】両手を伸ばして仰向けになり、ひざを立てる。手は胸の上でクロスする。

・足はそろえて床につける
【2】息を吐きながら5秒かけて、両ひざを外側にゆっくり開く。

・足裏は床にしっかりつけたまま
・おなかとおしりに力を入れることを意識する
【3】息を吸いながら、ゆっくりと両ひざを戻す。【2】~【3】を1セットとし、5回行う。これを5セット行うのが目安。

・おなかと太ももの内側に意識して力を入れる
寝たままで「おしり上げ」
おしりまわりの大殿筋と、太ももの内側にある内転筋群を刺激する。
【1】手足を伸ばして仰向けになり、ひざを立てる。

・足は軽く開く
・背中は反らさないように
・つま先は前に向ける
【2】息を吐きながら、おしりを床から持ち上げて5秒キープした後に、息を吸いながら、ゆっくりおしりを床に下ろす。1~2を3セットが目安。

・太ももの内側に力を入れる
・手の力は使わないように注意!
おしり上げに慣れたら「片足伸ばしおしり上げ」
【1】【2】は「おしり上げ」と同じ動き
【3】【2】の状態のまま、右足を伸ばして5秒キープ。息を吸いながらゆっくり足を戻して(ひざを曲げた状態に)、おしりを床に下ろす。

・体が一直線になるように足を伸ばす
・足首は垂直に立てる
・手に力は入れないように
【4】息を吐きながらおしりを持ち上げて左足を伸ばして5秒キープ。息を吸いながら、ゆっくり【1】の姿勢に戻す。【1】~【4】を左右3セットが目安。

・足を上げる高さはひざに合わせて
《骨盤底筋をほぐす》トレーニング効果をさらに高める!股関節を動かし刺激して骨盤の動きをスムーズにしよう!
トレーニング効果をさらに高める!股関節を動かし刺激して骨盤の動きをスムーズにしよう!
筋肉をほぐす「股関節ストレッチ」
骨盤底筋が衰えてくると、股関節も凝り固まってしまうもの。股関節を動かし緩めて、筋肉をほぐすことで骨盤の動きをよくする。骨盤のゆがみがとれて、骨盤底筋トレーニングの効果を高めることが期待される。
【股関節ストレッチ1】
【1】「正しい座り方」で椅子に座り、左足のひざを曲げる。息を吐きながらひざを胸に近づけて、10秒キープする。

【2】息を吸いながら左足を戻す。右足も同様に。左右3セットが目安。
背中はまっすぐ!
【股関節ストレッチ2】
【1】仰向けになり左足のひざを曲げて、両手で抱える。ゆっくり息を吐きながら胸に近づけて10秒キープ。

・手を軽く添える
・10秒キープ
【2】息を吸いながら手足を戻し、反対の足も同様に行う。左右3セットが目安。
「腹式呼吸」で骨盤底筋に刺激を与えて
骨盤底筋や横隔膜などのインナーマッスルを刺激し、鍛えることができるのが腹式呼吸。
「おなかをふくらませて5秒間かけて息を吸い込み、おなかをへこませながら10~15秒で息を吐く一連の呼吸が骨盤底筋を動かします。吐くときは骨盤底筋を引き上げるようにキュッと締めて、吸うときは緩めましょう」。
座りながらでも、寝ながらでもOK。
「呼吸時に胸が動いていないことを確認しながら、おなかのふくらみとへこみを意識して行って」。
◆教えてくれたのは:女性泌尿器科専門医・女性医療クリニックLUNAグループ 理事長・関口由紀さん
2006年より女性医療クリニックLUNAグループ理事長。現横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授。フェムゾーンラボ(株)社長。日本フェムテック協会代表理事。
取材/小山内麗香 イラスト/PIXTA
※女性セブン2025年10月9日号