家族会議のカギはエンディングノート
エンディングノートをきっかけに話し始めるのが有効だと言うのは、一般社団法人日本看取り士会会長の柴田久美子さんだ。
「エンディングノートとは、人生の終末期に備えて、マイナンバーや保険証、年金手帳などの重要情報のほか、受けたい医療や介護、そして葬儀やお墓などについての希望をまとめておくノートです。
私自身も書き始めるときには勇気がいりましたが、いざ書いてみたらその内容をとっかかりに家族と将来の話をしやすくなりました。月に一度から数か月に一度、お茶をしながら一緒にページを埋めていくと、スムーズに話を進められる。60才になったら、書けるところから1ページでもいいのでまず始めてみましょう」

エンディングノートは病気や認知症で意思表示ができなくなった場合にも効果を発揮する。
「がんなどの病気の告知をされたり、病状が急変したりすると、家族も一緒に焦ったり慌ててしまう場合があります。自分の意識がなくなってしまった場合にも、事前に価値観を共有しておくことで、家族や医師が選択をしやすいのです。
『無理な蘇生を行うことで病院で寝たきりになってそのまま死ぬのは避けたい』『終末期には治療をやめて自宅に戻りたい』という意思をノートに書き、共有しておく。これだけでも立派な家族会議といえます」(柴田さん)
家族会議とはいえ、「自宅で死にたい」という意思を伝えるのは家族に限る必要はない。
「本人の意識がない場合などに、代理で意思決定をしたり連絡の窓口になるのが『キーパーソン』です。われわれが訪問医療で接している患者さんのなかには、独身者を含め、周囲に介護者がいないかたが全体の3割以上いらっしゃいます。
そういった場合、昔の職場の同僚や近所の知り合いなど、懇意にしている人がキーパーソンになるケースもあります」(安井さん)
医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳さんも言い添える。
「厚労省も、人生の最終段階の医療に関する意思決定について『家族等への説明と話し合い〜』と定めています。この『等』が重要で、家族に限らないという意味です。家族がいたとしても疎遠な場合は、『近くの他人』であるキーパーソンを尊重するケースも少なくありません」
未婚の場合や、子供がおらず配偶者に先立たれているなどおひとりさまの場合は、キーパーソンが家族会議の重要なメンバーになる。家族がいても、遠方に住んでいる場合には近所の人やかかりつけ医も含めて意思を共有しておくといい。

(後編に続く)
※女性セブン2026年7月23日号