普段、何気なく飲んでいることが多いお茶は、昔から生薬として用いられることも多く、さまざまな健康効果が秘められている。よく飲むお茶や、好きなお茶には、どんな効果が期待できるのか? 健康によいお茶選びの極意を、お伝えします!
おすすめの飲み方
お茶として飲まれている植物には、漢方薬の原料になっているものも多いというのは、薬剤師で漢方スクールの講師も務める鈴木養平さん。
「お茶は体への作用が穏やかです。それゆえ、平熱なのに体がだるいなど、“未病”と呼ばれる、病気の一歩手前の状態に適しています。お茶であれば自分で選んで気軽に試せますし、体のバランスを整えるのにおすすめです」(鈴木さん・以下同)
そもそもお茶は、東洋医学の経験に基づき働きが伝えられてきたもので、科学的な理由付けができないものも多かった。しかし近年は成分の解明も進み、理由付けができるものが増えていることから、健康茶ブームが起きているのだ。では、適量や飲み方は?
「人が、食事以外で摂る水分量の目安は1日に1~1.5L。そのすべてをお茶にしてもいいですし、水とお茶を半々にしても、何杯か取り入れるだけでもかまいません。適量はその人の体調によって異なります。
湿度の高い日本では、1日の排尿回数は7回前後が正常とされているので、水分を多く摂っているのに、トイレにはあまり行かない場合は、体内に余分な水分をため込み、むくんでいるかもしれません。1日の水分量と、トイレの回数を比べて、多いようなら飲む量を減らしましょう」
お茶は熱湯で煮出すことで抽出される成分が多いが、飲む時に熱すぎると胃腸に負担がかかる。特に、体調が悪い時には人肌程度に冷まして飲むのがおすすめだ。
「冷やしすぎも胃腸に負担がかかり、体を冷やします。冷蔵庫で保存しているお茶は、すぐに飲まず、常温に近づけてから飲むといいでしょう」
煮出してお茶にするには?
また、お茶には毎日同じものを飲んだ方がいいなどの注意事項はなく、飲んですぐに不調が治るわけでもない。慢性的な悩みに合うお茶と、気になる不調に合うお茶を交互に飲んだり、ブレンドしたりして、楽しみながら飲み続けるのがおすすめだ。
「ただ、体を冷やすお茶と、温めるお茶をブレンドするのは、よさを打ち消し合ってしまうので避けましょう」
煮出してお茶にするときのポイントは以下の通り。
【1】 やかんに水と茶葉を入れて、沸騰させる。
【2】 沸騰したらとろ火にして、10~15分煮る。
【3】 【2】の火を止め、茶こしで茶葉をこして、茶わんなどに移し替えて飲む。
鈴木さんに聞いた、主なお茶のそれぞれの特徴をまとめたので、参考に選んで。
【カミツレ茶】ぐっすり眠れない人に
《特徴》
別名はカモミール。キク科の耐寒性の強い一年草で、花は白と黄色があり、花や茎、葉をお茶にする。
《作用》
りんごに似た香りで飲みやすく、西洋ではハーブティーとして親しまれている。炎症を抑え、発汗を促すので、のどの痛みを伴う風邪や口内炎にもおすすめ。気持ちを静める効果もあり、安眠をサポートする。消化を促進し、ストレスや食べすぎから胃を守ってくれる。
【柿の葉茶】風邪を予防したい人に
《特徴》
渋柿は中国原産といわれる。カキノキ科の植物で、お茶には葉を使用。
《作用》
お茶に含まれるビタミンC は熱に弱いものもあるが、柿の葉に含まれるものは熱に強く、煮出しても豊富なビタミンCが損なわれないため、風邪を予防し、肌荒れにも役立つ。柿渋に多量に含まれるタンニンは、ビタミンPと働きが似ており、血管を丈夫にするため、血圧の異常や動脈硬化を予防する。
【菊の花茶】目の充血やめまいが気になる人に
《特徴》
キク科の植物。お茶には鑑賞用ではなく、食用の花弁を使用。
《作用》
中国の古い書物には、関節の痛みを和らげ、胃腸の働きをよくする長寿の薬として紹介されている。目の疲れや充血、頭痛が気になる時に飲むのがいい。体全体のバランスを整え、加齢とともに悩む人が多いめまいや耳鳴りなどの不調にも◎。スーパーなどの野菜売り場にある食用菊でも代用できる。
【くこ茶】血行不良で疲れやすい人に
《特徴》
とげのあるナス科の植物。お茶には赤い果実を使う場合と、葉を使う場合がある。楊貴妃は毎日果実を3粒食べたという逸話も残っている。
《作用》
果実を煮出して飲む場合は、血行をよくするベタインなどの作用で滋養強壮や目の疲れにいい。白内障や老眼の予防にもなる。葉を煮出す場合は、毛細血管の血管壁を丈夫にするので、血圧の対策、動脈硬化や風邪の予防に。
【どくだみ茶】吹き出物が気になる人に
《特徴》
日本特有の野草で、強い香りがあるドクダミ科の植物。茶には茎と葉を使う。
《作用》
解毒作用や抗菌性があり、膿をもつような皮膚トラブルにいいため、新鮮な生の葉をあぶり、腫れのある患部に当てる治療法も古くから行われてきた。乾燥させてお茶にすることで、香りが和らいで飲みやすくなる。便通を整え、ポリフェノールが血圧を調整する作用もある。
【クマザサ茶】胃もたれが気になる人に
《特徴》
日本各地の山地に自生しているイネ科の植物。葉の外側が白く縁取りされた笹で、茶には葉を使う。
《作用》
昔から、笹には殺菌効果があるため、食べ物を包むのに用いられてきた。葉緑素やビタミン類、カルシウムを多く含み、血液を弱アルカリ性にして浄化したり、免疫力アップにもつながるとされる。また、胃腸の調子を整え、口臭も予防する。これからの季節、飲み会続きの人にピッタリだ。
【黒豆茶】生活習慣病の予防に
《特徴》
黒大豆というマメ科の大豆の一種。お茶は豆を炒って使うので香ばしい。
《作用》
煮出して飲むと血流を促すので、冷え症やむくみ、月経不順に悩む人におすすめ。ポリフェノールが豊富なので、老化防止や生活習慣病の予防にも注目が集まっている。さらに、肝機能をサポートするビタミンB1が豊富で、二日酔いの時にも飲みたい。大麦などとブレンドされる場合もあるので内容の確認を。
【杜仲茶】疲れが気になる人に
《特徴》
中国原産の高木。トチュウ科の植物で、氷河期も生き抜き、過酷な環境にも順応してきた。お茶には葉を使用。
《作用》
心臓をはじめ内臓の働きをスムーズにし、気力も与えることから、中国では樹皮を不老長寿の薬として使ってきた。葉にも同じような作用が期待でき、疲労回復や免疫力を高めるほか、体脂肪や中性脂肪を減らす作用もあるため、ダイエットをサポートするお茶としても人気が高い。
【よもぎ茶】冷えが気になる人に
《特徴》
山野でよく見かける多年草でキク科の植物。葉と茎を煮出して飲む。
《作用》
昔から草もちなどで食されてきた。その後、体を温める作用があることからお灸の“もぐさ”としても使われるようになり、冷え症や胃腸虚弱を和らげたり、動脈硬化の予防のためにも使われている。茶葉はそのまま入浴剤としても使用できるので、冷えやすい冬や、腰痛、痔の痛みが気になる時にもおすすめ。
【そば茶】血液をきれいにしたい人に
《特徴》
中国原産で、日本では高原や盆地で栽培されるタデ科の植物。お茶は炒った実を使用。
《作用》
近年、健康効果に注目が集まり、お茶としても人気。ルチンというポリフェノールが豊富で、毛細血管を丈夫にして血液をサラサラにするので、血圧の対策、糖尿や、動脈硬化の予防につながる。食物繊維も豊富なので便秘解消にもいい。煮出してもお湯を注いで飲んでもOK。
【はと麦茶】肌荒れが気になる人に
《特徴》
イネ科の植物で、外皮をむいたものを使用。
《作用》
漢方薬では“ヨクイニン”と呼ばれ、鎮痛剤などに利用されてきた。たんぱく質や脂肪のほか、ビタミンやミネラルが豊富で、皮膚の新陳代謝を促進してなめらかな肌に導くので女性に人気。イボを取る効果もあり。関節炎やリウマチ性疾患、筋肉の緊張による肩こりなども緩和する。飲む場合は熱湯で10~15分煮出して。
【昆布茶】高血圧が気になる人に
《特徴》
コンブ科の海藻。お茶には、昆布の中でも細胞分裂が盛んな、葉の下部と茎の上部の間の”根昆布”が◎。
《作用》
水溶性食物繊維が多いので便秘解消につながるほか、コレステロールを下げ、動脈硬化や血圧対策に。ミネラルと結合しやすく、塩分過多で過剰になるナトリウムを排出する。粉末で使用されることが多いが、食事中に熱湯を注いだ昆布茶を飲むと血糖値の急上昇を抑制する働きが。
【トウモロコシのひげ茶】むくみが気になる人に
《特徴》
イネ科の植物。実から出るひげのようなものが“めしべ”で、お茶にするのはこちら。飲む場合は、10~15分煮出すとよい。
《作用》
めしべは南蛮毛と呼ばれ、古くから生薬や西洋薬で利尿薬として活用されてきた。カリウムが豊富でお茶の中でも特に利尿効果がある。体内の過剰な水分や塩分を排出するのでむくみや腎臓病を緩和するほか、血液の圧迫も抑えて血圧対策にも。
【麦茶】体のほてりが気になる人に
《特徴》
イネ科の麦の中でも、お茶にするのは大麦の実。
《作用》
暑い夏に飲むイメージ通り、体の熱を冷ます作用がある。煮出しても、熱湯を注いで飲んでもいいが、更年期障害で体がほてる場合は、温めて飲めば体を冷やしすぎないので、冬でもOK。ミネラルが豊富なので、運動時など汗をかいた時の脱水症状も防げる。ノンカフェインなので胃の粘膜を保護し、空腹時にもいい。
【ルイボスティー】老化を遅らせたい人に
《特徴》
南アフリカの高原地帯が原産の低木の針葉樹で、マメ科の植物。お茶には葉を使用。
《作用》
アフリカでは先住民の時代から、不老長寿のお茶として親しまれてきた。しっかりと煮出して飲むと、SOD酵素が老化の原因になる活性酸素を抑えるため、シミなどの肌の老化、成人病予防など多方面に影響する。鉄分などのミネラルも豊富で、カフェインはないため、妊娠中も安心。
イラスト/あきばさやか
※女性セブン2018年11月22日号
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