「食欲がないから、食事は食べやすいものを…」という食生活が、夏バテを長引かせる原因になっているかもしれません。夏バテ対策は夏バテのメカニズムを理解することが重要だと話す、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんに、夏バテが起こる理由や、対策に役立つ食材と漢方薬について教えてもらいました。
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こんな症状は夏バテのサイン
夏バテとは、病名ではなく、暑さで引き起こされるさまざまな症状の総称です。具体的な症状は以下の通りです。
・全身の倦怠感
・ほてり
・疲れやすい
・眠りが浅い、寝つきが悪い
・食欲がわかない
・イライラしやすい
・立ちくらみ
・吐き気
・頭痛
・下痢、便秘
・むくみ
・やる気がでない
夏にこれらの症状が起こる主な原因は自律神経の乱れです。室内外の急激な温度差に対応できないことや寝苦しい環境での睡眠不足などにより生じます。
自律神経は活動しているときに働く交感神経とリラックスしているときに優位になる副交感神経の2つで構成され、両者がバランスをとりながら働いていますが、温度差や睡眠不足などにより心身にストレスがかかると、この2つのバランスが崩れます。交感神経が優位になりすぎると、胃の消化や吸収の働きが低下するのです。
そして食欲減退による栄養不足、発汗異常による体温調節の不具合や脱水などにつながり、さらにさまざまな不調があらわれると考えられます。
夏バテで食欲がないときにおすすめの食事
自律神経の乱れの影響で胃の動きが悪くなると食欲が減退します。また、「お腹は空いているけれど、暑さであまり食べたくない」というときもあるでしょう。
そんなときに、ポタージュスープのような液体や、のど越しのよい麺類だけで食事を済ませてしまうのは、栄養不足以外にも心配な点があります。
胃はほとんど筋肉で構成されているので、使わないと衰え、機能が落ちてしまうのです。咀嚼(そしゃく)することで胃のぜん動運動が促され、その筋肉が鍛えられるので、あまり噛まない食事を続けていると、ますます胃の働きが弱まる可能性があります。
胃の働きが低下しているときは負担にならないよう配慮しつつ、怠けさせないような食事をすることが回復の助けになります。
そこで、夏バテで食欲がないときにおすすめしたいのが和食です。体調や気分が優れないときに無理をしてまで食べる必要はありませんが、和食は夏バテ解消、予防に非常に優れた食事です。
白米ごはん
粉食と呼ばれる麺やパンに対して粒食と呼ばれるごはんは、食べる際に咀嚼が十分に行えます。
また、白米ごはんに含まれる脂質の量は0.3g/100gと少なく、胃に負担をかけずに消化ができるのも優れた点です。主成分の炭水化物は速やかにエネルギー源になるので、夏バテ回復にも役立ちます。
具だくさん味噌汁
汁物も具だくさんに作ると咀嚼が増えます。たんぱく質は消化に時間がかかり、胃の負担になりやすい栄養素なので、具材は野菜を中心にしましょう。一方、味噌に含まれる大豆のたんぱく質は麹菌などの作用でスムーズに消化が行われるため、胃の機能が低下しやすい夏に役立つたんぱく質源です
さらに、大豆に含まれるトリプトファンは、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の材料になるため、よい眠りにもつながります。
梅干し
梅干しに含まれる酸味成分のクエン酸は消化液の分泌を促し、胃の働きを助けます。また、クエン酸には食欲増進効果も認められています。梅干しはごはんのお供としてそのまま食べてもいいですし、梅肉和えや梅煮など料理に取り入れてもいいです。