
約30年間、冷えについて研究している理学博士で全国冷え症研究所の所長・山口勝利さんは、顔や足のむくみは腎臓の機能が低下している兆候だといいます。腎臓の機能が低下すると、むくみだけでなく、だるさが抜けなくなったり、夜中にトイレに行く回数が増えたり貧血になりやすくなったりなど、さらなる体調不良を招くそう。山口さんが著書『内臓を温めるという提案 代謝アップ×免疫力アップ× 血流アップ』(アスコム、監修:内科医・井上宏一さん)で語っている「慢性腎臓病」とその対処法について解説します。
1330万人が罹患する新たな国民病慢性腎臓病の危険性
山口さんが警鐘を鳴らす慢性腎臓病は腎臓の機能低下が慢性的に続くもので、国内の患者数が約1330万人いるといわれていることから、新たな国民病といえるものだと山口さんはいいます。
恐ろしい慢性腎臓病の悪化!透析の可能性も
沈黙の臓器と呼ばれる腎臓。慢性腎臓病は深刻具合によって5つのステージに分けられるといいます。状態が悪化しても自覚症状が出にくく、気づいたときにはかなり悪化していることも多いようです。
慢性腎臓病は、腎臓の健常度がわかる値・GFRの数値によって、症状と治療が変わります。GFR90以上のステージ1は、健康な状態で、治療も必要ありません。GFR60~89のステージ2は、自覚症状はほとんどなく、生活習慣を改める程度でOKです。GFR30~59のステージ3になると、むくみや夜間糖尿、血圧上昇などが起こり、腎臓の働きを保つ治療を行う必要があります。

GFR15~29のステージ4だと、体がだるい、動悸などの症状があり、薬などによる腎臓機能のサポートが必要になります。GFR15未満のステージ5になってしまうと、むくみやだるさに加えて食欲減退、吐き気、息切れなどの不調が起こり、腎臓がほとんど働かなくなる状態に。こうなると、透析治療や腎移植が必要になります。
慢性腎臓病と内臓の温度
山口さんによると慢性腎臓病は内臓の温度と密接な関係があるそうです。どの内臓も、温度が低下すると血流が悪くなって、各器官に十分な栄養と酸素が送られなくなり、働きも低下するからです。
「特に腎臓は内臓温度の低下に敏感に反応し、低くなるにつれて働きが鈍くなります。さらに、内臓の働きが低下すると腎臓の機能が低下するだけでなく、たとえば胃は消化や吸収の活動が悪くなり、胃もたれを起こします。肝臓は解毒機能に負担がかかり、疲労が抜けにくくなります。大腸なら下痢や便秘など、内臓の機能低下は体にとって悪いことだらけなのです」(山口さん・以下同)

1日3分でOK!内臓を温める3つのストレッチ
慢性腎臓病を改善するには、さきほどお話しした内臓の温度がカギです。内臓の温度を上げるには、ストレッチが効果的だと山口さんは話します。ストレッチによって、筋肉を使って熱を作る力をつけ、血液を体全体に運ぶ筋肉のポンプ機能を高めるのがよいそうです。
山口さんが提唱する「ほかほかストレッチ」は、自宅でわずか3分でできる簡単なもの。3種類のインナーマッスルを刺激して、筋肉の熱を作る力と運ぶ力を強化しましょう。基本的に座り姿勢で効果は十分ですが、負荷をかけたい、物足りないと感じるときは立った状態で行ってみましょう。
(1)インナーマッスルを左右から刺激「ヘリコプターストレッチ」

【1】背筋を伸ばして椅子に座り、両腕を伸ばしたまま肩の高さまで上げる。

【2】両腕を伸ばしたまま、上体を右にひねる。ひねりきったところで5秒キープ。目線を右手から離さないようにしながらひねると、限界までひねることができる。終わったら【1】の上体に戻る。

【3】両腕を伸ばしたまま、上体を左にひねる。ひねりきったところで5秒キープ。目線を左手から離さないようにしながらひねると、限界までひねることができる。終わったら【1】の上体に戻る。
【1】〜【3】を5回繰り返す。
※立って行う場合は、足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ち、同じ動きをすればOK。
(2)インナーマッスルを前後から刺激「足上げガッツポーズストレッチ」

【1】背筋を伸ばして椅子に座り、右ひじを曲げて前に上げる。

【2】右ひじの先端と右足のひざ頭が触れるまで右ひじを下げ、同時に右ひざを上げる。約30秒間リズムよく20回繰り返す。できなければひじとひざは触れなくてもOK。

【3】左も同じように約30秒間、ひざとひじが触れる動きをリズムよく20回繰り返す。
※立って行う場合は、足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ち、バランスを崩さないように気をつけながら、同じ動きをする。
(3)お腹からの血流をよくする「おじぎストレッチ」

【1】背筋を伸ばして椅子に座り、両手をそれぞれの太ももに置く。

【2】両手を太ももの上をすべらせながら、上体を3秒くらいかけてゆっくり前に限界まで倒していく。これを20回行う。
※立って行う場合は、足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ち、同様の動きをする。
ストレッチに加えて、内臓を温めるスパイスを
山口さんは、ピリッとした辛みとエスニックな香りがするスパイスのヒハツを食事に取り入れ、体の外と中から内臓を温めることを推奨しています。

「ストレッチは、3種類をそれぞれ1日1セットずつ行いましょう。寝起きでも、日中の空き時間でも、夜寝る前でも、いつ行ってもOKです。
この3つのストレッチは、内臓の毛細血管を丈夫にする香辛料・ヒハツを使った料理を食べたあと、胃が落ち着いたころにすると、すぐに体がぽかぽかと温まってさらに効果的になります」
ヒハツの摂取量の目安は1日あたり小さじ1/2ほど。味噌汁やお茶にひと振り入れるのもいいですし、肉の下味に使うのも、臭み取りになるのでおすすめです。
◆教えてくれたのは:理学博士、柔道整復師、鍼灸師、全国冷え症研究所所長・山口勝利さん

冷えを改善しながらやせる形状記憶ボディメイクサロン・シェイプロック銀座代表。30歳のときに構えた鍼灸の治療院で多くの患者を施術するなかで、体の冷えがあらゆる不調の原因となっていることに気づき、「全国冷え症研究所」を1998年に開所。今では、全国に400の分室を持ち、冷えに関する6万人のデータを持つ。「冷え」の怖さ、対処法を広めるべく、TVや雑誌などにも多数出演し、「冷え症」治療の第一人者として注目されている。https://www.ogino-hs.com/hiesyou/index.html
◆内科医・井上宏一さん
日本内科学会認定内科医、日本抗加齢医学会専門医、南砂町おだやかクリニック院長。2000年3月順天堂大学医学部卒業後は、一つの臓器だけを専門にするのではなく、人間の体全体を診ることができる医師を目標に、小児科医、内科医として、さまざまな病院で研さんを積む。現在、南砂町おだやかクリニック院長を務め「『健康=幸せ』の実現をサポートする医療」を掲げ、西洋医学にとらわれず、代替医療も取り入れた総合医療を目指している。