ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)。このほど人生初めての講演会オファーが届いた。本番直前に「大風邪をひいた」というオバ記者。果たして本番はうまくいったのか? 一部始終をリポートする。
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「講演をしてくれませんか?」という1本のメール
暗転か好転か。大なり小なりみんなそうだと思うけど私の場合、上がり下がりが極端なのよ。最近でいえば昨秋、「卵巣がんの疑い」という診断でお先真っ暗な気分になっていたら、NHK『あさイチ』の出演依頼が来るわ、念願だった刑務所の取材が許されるわ。で、「卵巣がんの疑い」は手術をしたら、「境界悪性腫瘍」で卵巣と子宮は全摘出したけどお腹のリンパは温存という結果。
まさに命がけのアップダウンだったけれど、それだけじゃない。ここ数年、ご難続きもいいところで 家族3人と飼い猫と親友と6年の間に5つの命がこちらからあちらの世界に移ってしまい、いまだにしみじみと悲しむ気になれないんだわ。
そんな私に「茨城県桜川市で講演をしてくれませんか?」とメールが来たのは今年の春のこと。依頼主は桜川市健康推進課の課長Sさんで、コロナ禍で出来なかった『きらきら健康講座』の第1回目で「境界悪性腫瘍」の体験を語ってほしいと、こういうわけ。後から知ったけど彼女は以前から私の記事の読者で「タイミングをみて講演をお願いしようと決めていました」だって。
講演会の告知は市の広報で知らされ、市役所の入り口や人が集まるスーパーマーケットにチラシが置かれて、「あれよ、こらヒロコちゃんだっぺな。(あらぁ、これはヒロコちゃんじゃないの)」と町中がざわつく様子が目に浮かぶよう。それを見た小学校の同級生のG君は動画撮影をしてくれると申し出てくれて、同級生にも声をかけてくれるという。
本番直前になって大風邪をひいた
しかし、大きなことが起こる前って、普段とは時計の針の進み方がまったく違うんだよね。2か月前まではのたりのたりと動いていたのに、1か月を切るとあれよあれよ。針の動きが弾みをつけて早くなって講演会の日まであと2週間、あと10日。その日を思うとドキドキしてきた、なんてタイミングで大風邪をひいた私。
ああ、始まったよ。運命のアップダウンが! 舌打ちしたいような気持ちでPCR検査を受け、かかりつけ医に相談して家で伏せっていたら、日に日に体調は良くなり、いよいよ当日を迎えた。
「えーっ、オバ、顔がピカピカしている! リフトアップもしている! どうしたのよ」
同行してくれた編集のAちゃんは私の顔を見るなりよ。実は講演会のあと、Aちゃんが企画、編集してくれた著書『で、やせたの?』(有田リリコ共著・小学館刊)のサイン会を開くことになったのよ。字が下手な私は気が重いけれど、リリコさんが絵を描いてくれるのは心強い。
そのサイン会で、「若ーい」と言われなくてもいいけど、「老けたよねー」とは思われたくないじゃない? それで実は前日にかかりつけの鍼灸院で体に活力がみなぎる鍼を打ってもらい、顔のエステも施してもらったの。そう、やるだけのことはやったんだって。
それでも会場の真壁伝承館 まかべホールの入り口を見た時は、背筋がビンと伸びたよね。