自宅の浴槽内で亡くなっていたところを事務所スタッフに発見された中山美穂さん(享年54)。死因について、所属事務所は12月8日、「入浴中に起きた不慮の事故」と発表した。
家庭における事故死の死因のトップは浴室内での溺死及び溺水
身の危険がないように思える自宅だが、実は命にかかわる事故は多い。なかでも最も危ないのが浴室で、入浴中の事故が頻発。厚労省の調査では2023年に浴室内での溺死及び溺水で命を落とした人は6900人に及び、家庭における事故死の死因のトップだ。そこに「浴室での病死」も加わり、12~2月の冬に死亡者が増加する。牧田産婦人科の院長である牧田和也さんが語る。
「血圧の乱高下により心臓や血管の疾患を引き起こす『ヒートショック』が原因です。特に冬は暖かい部屋から寒い脱衣所と浴室へ移動し、血管が収縮することで血圧が上昇し、さらに温かい湯につかることで血管が弛緩して血圧が急降下するので要注意なのです。特に更年期の女性には血圧が高めのかたも少なくなく、より血圧の乱高下によるリスクが高まります」
更年期とは、閉経時期の前後10年間ほどを指す。54才だった中山さんもまさに更年期世代だ。
「8割近い女性が更年期に何らかの不調を感じるといわれ、中山さんも、50才頃のインタビューでホットフラッシュを時々感じると、更年期障害の症状に悩まされていると明かしていました」(芸能関係者)
そもそも更年期障害とは、50才前後の閉経に伴い卵巣から分泌される「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌量が減少することで、心身に不調が現れることを指し、少し歩いただけで息切れしたり、めまいやほてりに悩まされたりする。そして中山さんが大好きだったというお酒は、更年期障害の症状に悩む人にとってはリスクが大きい。
「血管拡張作用を持つアルコールがトリガーとなり、ほてりを促進する可能性があります。また、エストロゲンの減少により、体内に中性脂肪が蓄積されやすくなります。中性脂肪の増加は動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの増加を促すので、血管系の疾患を引き起こすリスクが増大。
また、エストロゲンの減少は骨密度の低下を引き起こします。過度な飲酒は体内でのカルシウムの吸収を妨げるので、骨粗しょう症の誘発にもつながるのです」(牧田さん・以下同)
更年期の飲酒は精神面にも影響を及ぼす。
「更年期に生じるメンタルの悪化は、エストロゲンの減少による自律神経の乱れも原因です。そこに飲酒を重ねると、交感神経が優位になり、症状を悪化させます。すると不安感の強さから、酒量をコントロールできなくなり、アルコール依存症に陥るリスクも出てきます」
睡眠薬代わりの飲酒は、耐性がつき酒量が増える原因に
実際、久里浜医療センターが2022年に行った調査によれば、アルコール依存症の疑いがある40代女性の数は、30代女性と比べると2倍以上。更年期にさしかかるタイミングで急増している。だからこそ飲み方には要注意だという。
「就寝前の飲酒は避けましょう。睡眠薬代わりの飲酒は、次第に耐性がつき、酒量が増える原因になります。一方で適度な飲酒はストレス解消になります。1日1杯までとマイルールを設けたり、肥満や動脈硬化の原因となる糖質が多く含まれたビールや日本酒を避け、焼酎やウイスキーといった蒸留酒を選ぶとよいかもしれません」
飲酒と更年期のリスクに追い打ちをかけるのが入浴だ。2012年の厚労省の調査では、入浴中に急死し、解剖された症例の20%ほどからアルコールが検知された。
「アルコールを抜こうと飲酒後に湯船につかる人がいますが、弛緩した血管がさらに開き血圧の急降下を招きます。ヒートショック気味になったり、そのまま眠ってしまい溺れる可能性もあるので避けてください」
中山さんは美容のために入浴を大切にしていた。
「夜ゆっくりとお風呂につかることが習慣だったといいます。亡くなってしまったのは、更年期障害、アルコール、お風呂の三拍子が揃った結果なのかもしれません」(前出・芸能関係者)
浴室に潜む“落とし穴”を見過ごしてはいけない。
※女性セブン2025年1月1日号