子育てが落ち着いたり仕事が安定したりすることで、時間にも気持ちにも余裕が持てるようになる50代。この時期に趣味を探している人は多いかもしれません。
皮膚科医の鈴木稚子さん(52才、すぎき・わかこ)は、趣味は自己成長につながり、いざという時の心の拠り所にもなると話します。
ゴルフで付き合いが一気に広がった
「7年ほど前から、付き合いでゴルフを始めました。球技は苦手なのでゴルフは続かないと思ったのですが、プレーそのものよりも、いろんなかたがたと話せるのが楽しみになりました。医師の世界は狭くなりがちで、知り合いは医療従事者ばかりになることが多いのですが、交友関係が一気に広がりました。
私の場合は経営者のかたが多いのですが、私が知らない経験を持っている人たちばかりなので、世界が広がったり、新しいことを知ったりできます。初対面のかたが集まる食事に誘われても躊躇しますが、ゴルフなら昼間の開放的な空間ですし、警戒せずに参加できるのがいいですね。しかも、18ホールの間ずっと話すので、ぐっと仲が深まるんです」(鈴木さん・以下同)
◆年齢も性別も関係ない
ゴルフから始まり、プライベートでも相談し合える関係になることもあるそうです。
「スポーツは基本的に、同じレベルの人でプレーしないと面白くないと思います。でも、ゴルフは対戦をするわけではなく、足を引っ張ることにもならないので、レベルが違っていても一緒に楽しめます。年齢も性別も関係なく、誰とでもできるスポーツなんです。交流を深めるのにはぴったりです」
スコアにこだわらなくても楽しめる
練習に打ち込んでスコア100を切るのを目指すプレースタイルもありますが、鈴木さんはそうではありません。
「私のように、出会いや会話を楽しむためにゴルフをしてもいいと思います。ゴルフは外を歩くので自律神経のバランスが整うし、ストレスが軽減して心にもいいと言われています。子供からお年寄りまで無理なく始められる趣味といえます。
ゴルフはお金がかかると思われがちですが、安く回れるゴルフコースも増えました。道具も中古でそろえれば、それほどかかりません」
◆初心者でも早めにラウンドするのがおすすめ
ゴルフを始めたら、思い切って早めにラウンドするといいと鈴木さんは提案します。
「レッスンばかりしているとつまらなくなってしまいます。スコアにこだわるのなら別ですが、それなりに前にボールを飛ばせるようになったら、気軽な仲間とラウンドしてしまったほうが、ゴルフの魅力がわかりやすいと思います。
ルールもうろ覚えでいいんです。むしろ、初めてだから詳しい人に教わろうと、ルールを厳密にして口うるさい人と回ると、挫折してしまうかもしれません。まずは、わいわい楽しむのが一番です」
もし上達したいと思ったら、本やネットなどで独学したり、複数の人に教わるのではなく、1人のコーチに長く教わることが、上達の近道だそうです。
自然の中を歩いたらしっかり肌のケアを
広々としたホールを歩くのは気持ちがいいですが、女性は肌へのダメージが気になるかもしれません。皮膚科医の鈴木さんも、アフターケアは万全にしています。
◆ラウンドの翌日にはプラセンタ注射
「日焼け止めはもちろんしますが、ラウンドをした翌日には注射をしています。プラセンタやビタミンCの注射をして体の中からケアすると、高い効果を得られますよ。近年はますます日差しが強くなっているので、日傘をさしながらプレーしている人もいます。男性でも日傘をさす人は珍しくなくなりました」
先行きが見通せない今、趣味は心の拠り所に
今はコロナ禍で、先行きが見通せません。この時代を生き抜くにも、趣味は大切だと鈴木さんは語ります。
「誰にでも、仕事がダメになったり、健康が損なわれたりする可能性があります。私も30才のときにがんになりました。落ち込んだときに、不安に押しつぶされてしまう人も多いでしょう。そんなときに趣味があれば、生きがいや支えになってくれます。心の拠り所になってくれるんです」
◆趣味は自分を成長させるもの
鈴木さんは、趣味のない人生はありえないと言い切ります。
「私にはたくさんの趣味があります。ゴルフや登山、膝を悪くするまではトライアスロンもしていました。ヴァイオリンもしていますし、食べ歩きも趣味かもしれない。趣味とは、好奇心を持ってさまざまなことに興味を持つことですよね。アインシュタインは、“私には特別な才能などありません。ただ、ものすごく好奇心が強いだけです”と言っていたそうです。
新しいことを知ることになる趣味は、自分を成長させるものだと思います」
この人に聞きました:皮膚科医・鈴木稚子さん
東京都出身。1994年に東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学皮膚科学教室、国立大蔵病院臨床研究部皮膚科を経て、2017年六本木スキンクリニックを開院。多趣味で、温泉、旅行、スポーツ好きが高じて温泉療法医、日本旅行医学会認定医、日本医師会スポーツ認定医などの資格を取得している。https://roppongi-skin.com/
取材・文/小山内麗香
●52歳女医、死にかけながらもキリマンジャロ頂上を目指したワケ【趣味のススメ】