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【実例レポート】介護で浮き彫りになる「きょうだい関係」の現実 最高の介護パートナーとなった弟、母親の危篤で突如現れる長男のケースも

家事嫌いで口汚かった年子の弟

でも、わが家が母親の介護と看取りがうまくいったのは、ヘンな話だけど3年前に大工をしていた、私の年子の弟が58歳で亡くなっていたからなんだよね。ヤツは外では名工ということになっていたけれど、家の中ではなかなかのトラブルメーカーだったんだわ。

まず困るのが家事がまったくできないこと。子供のころから買い物を頼まれても頑なに行かない。家の中がどんなに困ろうが行かないと言ったら行かない。腹を立てた母ちゃんがゲンコツをくれても行かない。お米研ぎとかは餓死寸前までしなさそうな勢い。このかたくなさは私から見ても異常だったよね。

腕組みしている男性
昔から異常なほど頑固だった(Ph/photoAC)
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それと口汚さ。若い頃はそうでもなかったんだけど50代の晩年は酒に酔うと耳を塞ぎたくなるようなことを言う。しかも呆れるほど相手を傷つけることを的確に言うから言われた方はたまらない。だから長いこと私は会うのを避けていたの。

母ちゃんも最晩年にベッドの中で何回も言っていたもんね。「ばあさんを養老院で死なせたくせにと何回も言われた」って。これは気丈な母ちゃんの“弁慶の泣き所”で、私が中2のとき、認知症になった祖母が施設に入って3か月で亡くなったことを、ずいぶん悔やんでいたんだわ。近所の人にも「あんなに早くなくなるなら家で死にたかったろうよな」と面と向かって言われたし、祖母の娘、つまり小姑とは葬式の日に怒鳴り合いのケンカよ。

オバ記者
オバ記者の紹介で雑誌に掲載された年子の弟
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当時の田舎では家で看取るのが当たり前だったから、母ちゃんはそれを言われるとシュンとするしかなかったんだよね。祖母が亡くなった3年後、母ちゃんは町の福祉課のホームヘルパーになって「なんでここまで?」と思うほど働いたのも、祖母への負い目と私は見ていたの。

母ちゃんの介護に年子の弟が参加していたら…

だから、母ちゃんの介護にもし大工の弟が参加していたらと思うと…、いやダメだ。思いたくもないわ。何もしないくせに枕元で母ちゃんを傷つけることを言って、私と弟をいら立たせたと思うよ。実は私にとってキツイのは、なぜ弟がそういう行動に出るか、わかるからなんだよね。いやおうなく奴が背負ってきたもの。決して口にしなかったことを知っているから、ケンカになると最後は泣きながらつかみ合いになる。そんなケンカを母親のシモの世話をしながらしたいか? 絶対にイヤだよ。

オバ記者の「母ちゃん」
年子の弟と一緒に母ちゃんの世話なんてムリ!
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そうそう、もうひとつ、介護不適格人だった弟のやっかいなキーワードが「長男」よ。平成の人に言ってもわからないと思うけれど、昭和人間の長男のイメージといったら床柱を背にドンとあぐらをかいて座っているという感じ。「床柱って何?」と聞かれても困っちゃうけれど、とにかくタテの物をヨコにしないで威張って家族に命令をしているのが長男。そんな風に思っている人が大勢いて、それを不思議とも思わなかったんだわね。

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