母親の危篤で急に現れた長男のケース
そんな“長男”に振り回された人とつい最近、居酒屋で飲んだのよ。Yさん(63歳)。彼は一昨年に妻の母親を見送ったの。その数年前から週末ごとに都内から横浜の家まで車を走らせて、食事の用意から買い物。弱ってきてからは平日、会社を休んで病院の送り迎えをして、最後は施設へ入居する手続きから着替えの洗濯。
「夫婦だから当たり前と言われたらそれまでだけど、オレもそうとう頑張ったと思うよ」というんだけどね。彼の不満はそこじゃないの。実は妻には長く音信が途絶えていた兄がいて、結婚してから会ったのは2度、いや、3度かという感じ。義父と仲が悪くてケンカして家を出たというと威勢がいいけれど、陰で母親に無心の限りをつくしているというグチをYさんは妻から聞かされていたんだって。
「ビックリしたのは義母がいよいよ危篤になったら、それまで何度手紙を書いてもナシのつぶてだった義兄が現れて、開口一番、『これからは長男のオレが責任を持つから、心配するな』って言ったことだよ」
さらに驚いたのは妻は「お兄ちゃんも母親のこと、気にかけていたんだね」と嬉しそうだったこと。ひとりっ子のYさんにはこれが理解できない。
でもきょうだい愛もつかの間、翌々日に母親が息を引き取ると「ミスター長男」は、ささいなことで葬儀業者にケンカを売り、久しぶりに会った従兄弟をバカにする。さらにはリビングの真ん中に腕組みして「貯金通帳を出せ。〇日までにこれまでの収支を全部書き出せ」と言い出したそうな。