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若者に編み物がブーム! 67歳オバ記者が振り返る「編み物歴50年超」 本場のイタリアから糸を“輸入”、仏・パリで手芸屋さん巡りも

下腹部にいや~な感じを抱えつつ、いちばんしたかったことを叶えてきたオバ記者
実は編み物歴50年以上のオバ記者
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若い世代を中心に編み物がブームになっている。オバ記者ことライターの野原広子(67歳)は編み物歴50年を超えるベテランだ。そんなオバ記者が編み物ブームの”ナゾ”について綴る。

* * *

100均の手芸コーナーをのぞいてみると…

編み物ブームなんだってね。Z世代が100円ショップで毛糸を買い漁っていて品不足になっていると聞いて、100均の手芸コーナーをのぞいてみたんだけど、あらやだ、ほんとにない! こんなことは初めてだ。

オバ記者
100均の手芸コーナー。商品がまばらだった
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ネットで調べたら小さなバッグやマフラー、帽子を若い子が編んでいるんだって。そういえば思い当たることがあるの。この冬の初め、ものすごく簡単な四角の帽子を編もうと100均の棚を見たらすでにいつもの半分くらいしか品物がない。消えたのはいかにも若い子が好きそうなピンクや赤とか、色鮮やかなアクリル100%の並太か極太のもの。これならすいすい編み進められるから初心者向きなんだよね。

オバ記者
また別の100均では棚が空っぽ!
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それにしても毛糸が消えるっておかしくないかい? そう思った私は御徒町の駅前にある「ユザワヤ」に行ってみたの。「ユザワヤ」は手芸する人なら誰でも知っている専門店で私は何も作ってない時も定期的にのぞいているんだけど、ここでも驚きの光景を目にしたんだわ。

手芸人口は年々減っていて、「ユザワヤ」だって銀座店は閉店したし、ここ数年、寂しい思いでいたのに、なんと、人でいっぱいではないの。でもここの毛糸売り場もアクリル糸はあるにはあるけどかなり色が限定されている。なのにウール100%のちゃんとした毛糸は山積みになっているんだよね。

アクリル糸が品薄の理由は?

ウール100%はアクリルの倍から3倍くらいの値段がするけど小物なら2個、3個で作れるし、自慢じゃないがつい先日、ここの5個550円のあまり糸コーナーで買ったものでマフラーを編んだのよ。

オバ記者
ウール100%の毛糸で作ったマフラー
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それはともかく、どういうこと? アクリル糸が品薄の理由を腕組みしてしばし考えたの。アクリル糸の原料はプラスチックと同じ石油。ウクライナ戦争のせいで石油の値段が高騰して100均で売れるようなものはたくさん作れないのか。それとも私の知らないところで何か、大ブームが起きているのか。

手芸の世界って数年に一度、後から考えると不思議なものが流行るんだよね。たとえばアクリル糸で編む台所用スポンジ。これだと洗剤を使わないで油も落ちるとか言って、どこの家にもあったっけ。でも、いつの間にかブームが終わって、いまでも使っている人って、どのくらいいるのかしら。

未使用の固形石鹸に針でリボンを刺して白鳥を作るのも流行ったよね。トイレに置いて置くと石鹸のニオイがして芳香剤代わりになるというんだけど、私は手を出さなかった。手芸のやる気スイッチって人によって違うし、私の場合、どんなスイッチが隠れているか自分でも予想不可能なんだわ。

本場のイタリアから糸を“輸入”

で、振り返ってみたんだけど、私は大と小のスイッチがあるんだよね。ほら、手芸好きっていうとおだやかな女性の静かな楽しみってイメージじゃない? 今の私がやっていることはそのイメージとそう違わないと思う。ところがある条件が揃うと誇大妄想の大スイッチが入るんだよ。

ニット界の世界的な大御所といえばイタリアのミッソーニで、普通のセーターでも「15万円? あら、安いわね」というものよ。今は以前ほどの人気じゃないかもしれないけれど30年前は泣く子も黙る大ブランドだったんだわ。

オバ記者
縫物も得意なオバ記者(写真は手作りバック)
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「もともとミッソーニは糸のデザイナーだったのよね」と編み物の先生の叔母はその存在をよく知っていたけど、なにせ高い。ひと玉2000円はくだらなかったんじゃないかしら。

そのミッソーニの糸を段ボールで3箱、輸入したの。送り主はイタリアのトリノに住む日本人の絵描きのHさんで、「ミッソーニ? 今度個展をする町に製糸工場があるから、そこでなら安く買えるんじゃないかな」と言い出したのよ。値段を聞いてもらったら日本製の正規品より少し高いくらい。「じゃあ、買えるだけ、送れるだけ」と弾みがついた私。

叔母が開いていたいくつかの編み物教室の生徒さんが「ミッソーニがそんな値段で買えるの? キャーッ」ということになったから奪い合いよ。飛ぶように売れた。ってことは、ふふふ、いくら儲かるんだ? と、私も目に“円マーク”が光っていたね。

が、そこがにわか輸入業者の悲しさだよね。船便にしたけどけっこうな送料がかかったのよ。「ボクはいいです」と言うけど手を煩わせたHさんにも手数料を払いたい。終わってみたらトントンてか、少し足が出ていたというお粗末さ。

毎年のようにパリの手芸屋さんへ

でもこの時の体験が20年後に生かされたの。イタリアはどんな有名なブランドでも、素材なら安く買えるということを学習した私はフィレンツェでエミリオ・プッチのものと同じ布地を探しあてた。それで当時通っていた洋裁教室の先生の力をお借りしてワンピースを縫って、さぁ、さぁ、さぁ。エミリオ・プッチの店に乗り込んだ時の晴れがましさといったらなかったわよ。その頃、シルクのワンピースは30万円出しても買えなかったんじゃないかしら。

あの頃は航空券が安い真冬のパリへ毎年のように行っていてそのたびに手芸屋さんをのぞいていたっけ。パリには手芸屋さんがたくさんあるし、日本の手芸屋さんの地味な良妻賢母風の店構えと違って、ショーウィンドーだけでもワクワク、ドキドキなんだよね。

でもある時、気づいたの。気の利いた手芸小物のほとんどが日本製で、目を引く毛糸もメイドインジャパンだってことに。何してんだ、私。

オバ記者
最近はヨドバシカメラに行くと海外に来たような感覚になる
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そんなわけで大風呂敷を広げるだけ広げきった私は、外国といえば思い出すのはご近所のヨドバシカメラよ。ここへ行くと聞いたことのない言語を話す家族連れと必ず会うんだわ。最近目立つのは頭を布ですっぽり隠したイスラム圏の女性だね。あと北欧の人たち。円安、日本大安売りを肌身で感じるね。

とか、ぶちぶちと独り言を言いながら編み針を動かしている67歳。大きなスイッチはもうないのかな。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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