
音楽でキャラクターの性格を表現
数あるミュージカル作品のなかでも、何かと歌や踊りのシーンで感情を表現することの多い今作。その理由をゼメキス監督が説明する。
「ミュージカルで最も重要なのは音楽です。ミュージカル化が決まった当初から、音楽を使ってストーリーを進めたり、キャラクターをもっと深く掘り下げたりしようと話し合いました」
主役のマーティはもちろんだが、科学者としての葛藤や誇りを歌うドクのほか、貧しく苦労人ながら将来の成功を夢みるウエイターのゴールディ・ウィルソンらも、ダンスを交えながら高らかに熱唱することで、人格に深みが増して感じられる。
一方、いじめられっぱなしのジョージの場合、一挙手一投足が頼りない。それをダンスの名手・斎藤洋一郎が踊るからこそ、ひざがガクガクの腰砕けっぷりが絶妙で、終始笑いを誘う。

日本上演では『THE POWER OF LOVE』も日本語で
映画版では主題歌や挿入歌は原曲のままだが、ミュージカルではあえて日本語に訳すことにこだわったという。イギリスやアメリカでの上演を経て、今回初めて英語圏以外での上演となったが、日本でもよく知られている主題歌『THE POWER OF LOVE』も日本語に。
それについて演出家のジョン・ランド氏は「ザ・ビートルズがドイツに行って、『I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)』をドイツ語で歌ったのを思い出した」と話す。
「私たちがやっていることは、とってもクールだと感じています。タイトルは英語のままですが、歌詞は本当に素晴らしくて重要なもの。それで、観客に歌詞を理解してもらうために、日本語にしました」(ランド氏)
日本上演へのこだわりは、セリフにも潜む。1955年のドクの登場シーンで、2月末の公開稽古では実在するアメリカの大手ハンバーガーチェーンの名前がドクの口から飛び出したが、日本の有名自動車メーカーの名前に変更されていた。こうした遊び心がそこかしこに隠れているので、聞き逃しなく。
ミュージカル版こそ「Part4」!!
これまで幾度となく待望論が持ち上がっていた映画版のPart4。続編は、果たして作られるのか、ゲイル氏は思いがけない答えを返した。
「みんながよく『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part4』を作らないの? と聞いてくるけれど、実際にみんなが求めているのは、もう一度、(映画版の)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を初めて見たときのような感動を味わいたいということだと思います。それこそが、ミュージカルが提供するもの。世界中の多くの人々から、ミュージカルを見てとてもハッピーで、初めて映画を見たときのような気持ちを味わえたと言ってもらえる。それが私たちの望むことなんです」
確かに、たとえ原作映画を見てストーリーを知っていたとしても、まったく別の感動と驚きが味わえるミュージカル版は、いわばシリーズ最新作。Part4に値するといってよさそうだ。