自分の一部に母がいる
みどりさんを見送ってから10年以上経ったが、日常の1コマ1コマにみどりさんの生き様が刷り込まれているという。
「たとえば、茶碗蒸しを作れば自然と母のことが思い出されるし、もやしの下処理をするときは、『母はひげ根を取り除いていたけれど、私は取らないの』なんて比較をしてまた思い出す。母は料理も細かく丁寧に教えてくれましたね。しつけが行き届いていたのだと実感します」
さらにみどりさんは、安藤にさまざまな“言葉”も残してくれた。
「言葉できちんと伝えよう、という考えの人だったので、『世の中に寝るより楽はなかりけり 浮世の馬鹿が起きて働く』(※)といったこともよく言っていましたね。折に触れて思い出しては、母と同じせりふを口にしていることがあります」
自分の一部に母がいる――みどりさんの愛と生き様が、いまも安藤の人生の礎になっている。
(※)江戸時代の狂歌の一節。自分の時間や主体性を犠牲にしてまで、必要以上の収入を得る必要はないといった意味。
◆ジャーナリスト・安藤優子
1958 年、千葉県生まれ。都立日比谷高校から、アメリカ・ミシガン州ハートランド高校に留学。上智大学在学中より報道番組のキャスターやリポーターとして活躍。1986年、『ニュースステーション』(テレビ朝日系)のフィリピン報道でギャラクシー賞個人奨励賞を受賞。その後、『FNNスーパータイム』『ニュースJAPAN』『FNNスーパーニュース』『直撃LIVE グッディ!』(いずれもフジテレビ系列)などのメインキャスターを務める。女性の社会参画、政治・経済、国際情勢、介護・福祉などをテーマに講演活動も展開。著書は『ひるまない』(Grazia Books)、『自民党の女性認識―「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)、『アンドーの今もずっと好きなもの。』 (TJMOOK)など多数。
取材・文/上村久留美