夏なのに、室内では手足が冷たくてつらい人もいるのではないでしょうか? 暑い夏ほど冷房や冷たいもののとりすぎなどで体が冷えてしまい、体調を崩す人も少なくありません。
薬剤師の道川佳苗さんによると、夏の冷えからくる不調の改善に役立つ漢方薬はいくつかあり、タイプに応じた漢方薬を用いることで予防や緩和が期待できるそうです。そこで、冷えタイプ別に自分に合う漢方薬を導き出すセルフ診断を道川さんに教えてもらいました。
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外は暑いのに体はひんやり?「夏の冷え」症状と原因
夏は外の気温が高いものの、室内では冷房によって体が冷えすぎてしまうことがあります。そして、体が冷えることにより、以下のような症状が起こることもあります。
・腹痛や下痢
・頻尿
・頭痛やめまい
・肩こり
・月経不順、月経痛など
夏の冷えの原因としては、冷房のきいた部屋に長時間いることに加え、冷たい飲み物や食べ物のとりすぎによって胃腸が冷えることも関係します。
以下のように、人それぞれの冷えの症状ですが、その症状によって合う漢方も異なります。
・手足が冷える
・下半身が冷える
・全身が冷える
・手足は冷えるが顔はのぼせる など
あなたの冷えのタイプを診断
漢方の考え方では、「気・血・水(き・けつ・すい)」の3要素が滞りなく体内を巡っている状態が健康とされます。冷えは気・血・水のいずれかの量が不足したり、巡りが滞ったりすることで生じると考えられています。
そこで、その状態を整える漢方薬を用いることで冷えを改善していきます。つまり、「気・血・水」がどう偏っているかを判断することで、冷えタイプが分けられ、使用すべき漢方薬がわかってくるのです。
エネルギー不足の気虚・血虚タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「気虚(ききょ)・血虚(けっきょ)」タイプと考えられます。
・疲れやすい
・だるくて食欲がない
・手足などの末端が冷える
・貧血気味でふらつくことがある
・胃腸が弱く、下痢をすることがある
胃腸が弱い人に多い「気虚」は、エネルギーを作り出すことができないため全身が冷えやすい状態になります。また、全身に栄養や潤いを運ぶ役割の血(けつ)が不足した「血虚」の場合は、末端まで栄養が行きわたらないため、とくに手足などが冷えやすいです。
血の巡りが悪い瘀血タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「瘀血(おけつ)」タイプの可能性があります。
・肩こりや頭痛がある
・手足などの末端が冷える
・手足は冷えるのにのぼせることがある
・顔色が悪いといわれる
・目の下のクマやアザができやすい
・めまいが起こることがある
血(けつ)の巡りが悪い「瘀血」では、血行不良による冷えが起こります。冷え以外にも、肩こりや頭痛、のぼせなどの症状を伴うことが多いのも特徴です。
水の巡りが悪い水滞タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「水滞(すいたい)」タイプと考えられます。
・むくみやすい
・腰から足にかけてとくに冷える
・胃腸が弱くて下痢をしやすい
・体が重だるい感じがする
「水滞」タイプは、水(すい)の巡りが悪いので、体内に余分な水がたまりやすく、たまった水によって冷えやすくなります。また、冷えがあるとさらに水の巡りが悪くなるという悪循環に陥りやすくなります。
体質に合った漢方薬で夏の冷えのお悩みを改善
漢方薬は心と体全体のバランスを調整することを目的としており、原因がわからない不調や繰り返す不調を根本から改善することを得意としています。そのため、夏場の不調のもととなる「冷え」にも、漢方薬なら根本から対処できます。
自然の生薬から作られた薬なので、西洋薬よりも副作用が少ないことも特徴です。
エネルギー不足の「気虚・血虚タイプ」におすすめの漢方薬「十全大補湯」
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、気と血が両方不足した状態の冷えの改善に向いている漢方薬です。滋養強壮作用のある生薬により、気力・体力を補い、血行を促すことで全身にエネルギーや栄養が行きわたるため、冷えが改善します。
血の巡りが悪い「瘀血タイプ」におすすめの漢方薬「当帰芍薬散」
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血(けつ)の不足を補い、巡りをよくする生薬の力で体を温める漢方薬です。やせて体力のない人に向いています。また、水の巡りを改善する生薬も含まれています。
水の巡りが悪い「水滞タイプ」におすすめの漢方薬「苓姜朮甘湯」
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)は、水(すい)の巡りを改善して、余分な水分を排出することで冷えを改善します。とくに腰から足にかけての冷えが強い人に向いています。
冷えタイプを見極めて自分にあった対処法を
冷房のきいた部屋に長時間いたり、冷たいものを摂りすぎたりと体を冷やしてしまう機会が多くなり、冷えによる不調が出やすくなる、熱い夏。自分のタイプに合った漢方薬を服用することで、冷えが軽くなるだけでなく、体調が良くなるのも感じられるはずです。
漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
教えてくれたのは:薬剤師・道川佳苗さん
みちかわ・かなえ。漢方薬・生薬認定薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。大学卒業後、薬局にて従事し服薬指導をする中、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校で調理技術、栄養学を学ぶ。現在はweb上で健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。
・あんしん漢方(オンラインAI漢方)