
秋冬は、1日の気温差が大きく肩こりがひどくなりやすい季節。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、食事の内容や生活習慣で、肩こりをやわらげることができるそうです。そこで、肩こり改善におすすめの習慣や食事に取り入れたい食べ物、肩こりに効果があるとされる漢方薬について教えてもらいました。
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肩こりの原因は気温の変化
肩こりとは、首から肩にかけての筋肉が緊張し、血行が悪くなっている状態です。日中と夜の気温差が大きい秋冬は、この寒暖差がストレスとなり自律神経のバランスを乱すといわれています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が優位になりすぎると、筋肉が緊張し血管が収縮することで血行が悪くなります。その結果、肩がこりやすくなるのです。また、寒さにより無意識のうちに肩に力が入っていることも。この筋肉のこわばりが、肩こりの原因になるケースもあります。
肩こりを改善する生活のポイント
肩こり解消には、自律神経のバランスを整えることと、寒さに負けないように熱を生み出すことが重要です。すぐにできる工夫を2つご紹介します。

深呼吸する
短く早い呼吸は交感神経を、長くゆっくりとした呼吸は副交感神経を優位にします。
日中は緊張や興奮する場面が多く交感神経が優位になり、呼吸が浅くなりがちです。また、猫背など前傾姿勢でいることも呼吸を浅くする一因です。気がついたときでいいので深呼吸や伸びをして、副交感神経を優位にさせることを意識しましょう。
朝食で温かいものを食べる
温かい朝食をとると、熱を生み出しやすくなります。これには、胃腸を温める効果だけでなく、エネルギーを摂ることで睡眠中に下がった体温を速やかに上げ、エネルギー代謝を活発にする効果も期待できます。
エネルギー源になりやすいご飯と温かい味噌汁の組み合わせは、体が温まりやすく、多くの日本人に合った朝食といえます。朝食を控えたり、食べなかったりすると熱が十分に生み出せず寒さを感じやすくなるで、しっかり食べてくださいね。
肩こり改善に有効な栄養素・食べ物とは?
肩こり解消のために意識したいのは、血行を改善するためにリラックスと冷え対策につながる食材をとることです。薬ではないので即効性は期待できませんが、普段から食事に取り入れることで、気候の変化に揺らぎにくい体を目指せます。
ゆず

ゆずに含まれるリモネンという香り成分には、緊張をほぐしリラックスさせる効果があるといわれています。黄色いゆずは10月~12月が旬で、奈良時代から日本人に愛されてきた果物。レモンに比べて、国産で無農薬のものを手に入れやすいのも魅力です。
ゆず胡椒やゆず茶などを食卓に取り入れるのはもちろん、ゆず湯やアロマでも効果が期待できます。
米

炭水化物は効率的に熱を生み出し、体を冷えから守ります。また、パンや麺に比べて咀嚼(そしゃく)が多くなるので、上半身の血流改善を助けます。
十分に咀嚼しながら米を食べるポイントは、ご飯とおかずを分けることです。人は味を感じると飲み込む仕組みになっています。ご飯に味がついていると、十分に咀嚼する前に飲み込んでしまいやすくなるのです。
白ご飯はゆっくり噛むことでじんわりと甘味を感じるので、十分な咀嚼がしやすくなります。カレーライスや丼物など米と具が一緒になっているものを食べるときは、いつも以上に噛むことを意識しましょう。
アーモンド

アーモンドに多く含まれるビタミンEには、血管を拡張し、血流を促す働きがあります。
活性酸素によるダメージから体を守る抗酸化作用もあるビタミンE。活性酸素により血管がダメージを受けると血流不良が起こり、肩こりが悪化する可能性もあります。ビタミンEを継続的に摂り、活性酸素の働きを抑えましょう。
肩こりには漢方薬もおすすめ
それでも肩こりがよくならないときには、肩こりに効果が認められている漢方薬をのむ方法もあります。血流を改善するなど、体の内側から不調にアプローチする漢方薬は、肩こりの治療にも用いられています。

肩こりにおすすめの漢方薬2つ
・葛根湯
体を温める作用があることから風邪の引き始めに使われる葛根湯(かっこんとう)は、肩こりにも用いられる漢方薬です。肩のこりだけでなく、同じく血流不良によって引き起こされる首から背中のこりにも用いられます。
・当帰芍薬散
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は冷えが強く、貧血があり、疲労しやすいかたの肩こりに用いられる漢方薬です。「血(けつ)」のめぐりをよくする効果があるので、肩こりだけではなく、婦人科系疾患にも用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は自然由来の生薬を組み合わせて作られているため、西洋薬に比べて副作用が少なく、体に優しく働くといわれています。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。服用の際は自分に合う漢方薬を見つけるために、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

専門家に相談して漢方薬の助けを借りるのも選択肢の1つ。自分にあった方法を取り入れて、肩こりの改善を目指しましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。