
耳鳴りがして、集中できないということはありませんか? 漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、春には耳鳴りの症状が出やすくなるそうです。そこで、なぜ春に耳鳴りがしやすいのか、また耳鳴りの緩和に役立つ食べ物と漢方薬について教えてもらいました。
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春は耳鳴りがしやすい理由と症状や原因をチェック
耳鳴りにはメニエール病や突発性難聴などの病気が隠れている場合もありますが、今回は春によく起こる一時的な耳鳴りに焦点を絞った話をします。
耳鳴りの症状
耳鳴りといっても症状はさまざまです。「片耳から聞こえる」、「両耳から聞こえる」、「ゴー、ザー、ジー、ブーンなど冷蔵庫のような低い音が聞こえる」、「キーン、ピーン、ミーンなど金属音やセミの鳴き声のような高音が聞こえる」というのが代表的な症状です。
症状によって原因が異なるので、まずは自分の現状を把握しましょう。

耳鳴りが起こる原因はストレス
一時的な耳鳴りの原因は、ストレスによって自律神経のバランスが乱れていることがほとんどです。具体的には、イライラや不安、緊張などの心理的ストレスや、人間関係や家庭での問題をはじめとした社会的ストレス、温度や気圧、音などによる環境的ストレスなどがあります。
春は耳鳴りが起こりやすい
春は年度替わりで、公私ともに立場や環境が変わる人も多いでしょう。さらに、短期間で高気圧と低気圧が入れ替わったり、1日の中でも寒暖差が大きくなったりするため、気候の変化による影響もあります。このように、春は精神的にも環境的にもストレスを受けるリスクが高まることから、耳鳴りが起こりやすくなるのです。
耳鳴り改善! 旬の食材で体内バランスを整えよう
春の耳鳴りを緩和するには、ストレスで興奮した交感神経を抑えて副交感神経を優位にし、リラックスできるようにするのが効果的です。咀嚼は副交感神経を優位にし、ストレスに対して効能のあるセロトニンの分泌を促します。そこで、自然と咀嚼が増える、春が旬の食べ物を3つご紹介します。
豆ごはん

白米とグリーンピースを炊いた豆ごはんは、食感が不均一になり咀嚼が促されます。春から初夏の限られた時期にしか食べることができない生のグリーンピースは、風味が格別です。また、グリーンピースに多く含まれる葉酸は、脳や神経細胞の合成や新陳代謝に使われる栄養素で、自律神経を整えるのに役立ちます。
さより

さよりは小骨が多く食べるのに手間がかかるので、自然と咀嚼が増えます。さよりに含まれるビタミンB12は神経系の機能維持に必要な栄養素で、副交感神経を優位にする際にも利用されます。リラックス効果を求めるのなら、刺身よりも焼き魚がおすすめです。一度に口に入れる量を少なくすると1回の食事あたりの咀嚼回数が増え、自律神経が整いやすくなるので、丸ごと調理して少しずつ食べましょう。
生わかめ

歯ごたえがある生わかめも咀嚼を促す食材です。また、生わかめに多く含まれるマグネシウムは、神経の情報伝達の際に重要な働きをし、交感神経と副交感神経が協調するのに欠かせない栄養素です。日持ちしないため、生わかめが流通するのは収穫時期の春だけです。
不快な耳鳴りには漢方薬もおすすめ
自律神経を整える食事を意識していても耳鳴りが気になるときは、耳鳴りに効果が認められている漢方薬を服用する方法もあります。
漢方医学で耳鳴りは、体内の水分が過剰になっていることで耳の内リンパ液が影響を受けて起こると考えられています。そのため、水分の巡りをスムーズにし、体の余分な水分を排出する漢方薬を取り入れます。

耳鳴りに悩む人におすすめの漢方薬2つ
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
苓桂朮甘湯は体力がなく、めまいや耳鳴りがある人に用いられます。メニエール病や自律神経失調症にも使われています。
・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
半夏白朮天麻湯は胃腸が弱く、下半身の冷えやめまい、耳鳴りがある人に用いられます。胃下垂や自律神経失調症にも使われてます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。また、自然の生薬からできているので、一般的に副作用が少ないとされています。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
なお、長引く耳鳴りには病気が隠れている可能性もあるので、不安がある際は医療機関を受診することをおすすめします。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。