春は、狂犬病ワクチンの季節。愛犬に狂犬病の予防注射を受けさせることは飼い主の義務で、毎年4月1日から6月30日が接種期間になっています。しかし、犬にとって予防接種は不快な体験、怖い体験として記憶に刻まれがち。何年も繰り返すとすっかり注射嫌いになって嫌がったり暴れたりすることも。スムーズにワクチン接種を終えるために飼い主さんができることを、獣医師の山本昌彦さんに解説してもらいました。山本さんが教えてくれた4つのポイントとは?
日頃から動物病院をお散歩コースに
日本では、犬の飼い主は毎年1回、狂犬病の予防注射を愛犬に受けさせることが義務づけられています。また、義務ではないものの、ジステンパー、パルボ、アデノといったウイルス感染症への免疫をつけるための混合ワクチンも接種が推奨されています。ペットホテルやドッグランの中には、感染症予防をしていない犬の利用を断る施設も多くあります。
犬を飼う限り、避けては通れない予防接種。しかし、動物病院や臨時に設けられる集合注射会場へ行くのを嫌がる犬、病院や会場に着いても嫌がって鳴いたり暴れたりする犬は少なくありません。飼い主さんにできることはあるのでしょうか。
山本さんによれば、「まずは病院=怖いところという愛犬のイメージを払拭して、かかりつけの病院に行きやすいようにしておくことが大切」だということです。
動物病院が楽しいところというイメージに
「個人的な見解ですが、予防接種を嫌がる犬の多くは、そもそも病院に行くのも嫌がります。無理に連れて行かれて知らない人に痛いことをされる怖い場所だと思っているんですね。このイメージをまず上書きしましょう。
具体的には、犬が大好きな散歩のコースにかかりつけの動物病院を入れて、日常的に親しんでおくといいと思います。私はよく飼い主さんに『どうぞ、お散歩の途中にでも立ち寄ってください』と言います。実際に病院に連れて来てもらえれば、触れ合ったりおやつをあげたりして、私も犬が病院や獣医師を好きになってくれるように努めています(笑い)」
動物病院が患者で混み合っている場合は、建物の前で飼い主さんがおやつをあげるだけでも、犬が動物病院によいイメージを持つことにつながるそうです。動物病院は楽しいところ、いいことが起きるところというイメージを愛犬に定着させたいですね。
接種時は犬の前に回って気を引く
しかし、病院には慣れることができても、注射そのものがどうしても苦手という犬も数多くいます。そういう犬は「注射される!」と身構えてピリピリ。背中に意識が過度に向いてしまいます。
「そうすると、余計に痛みを強く感じやすくなりますし、針が入ったときに敏感に察して振り返ったり動いたりするので危険です」と山本さん。
注射されたことに気づかないケースも
そこで、飼い主さんには愛犬の意識を注射や背中からそらすことが求められます。
「愛犬の前に回って目を合わせてにこにこ微笑んだり、頭を撫でてあげたりするといいですね。実際に、飼い主さんが構ってくれる触ってくれると犬が喜んでいる間にさっと注射できて、犬は注射されたことに気づかないようなケースも結構ありますよ」