
最近では日焼け前に飲んで紫外線を防ぐ「飲む日焼け止め」といったサプリメントもあるように、紫外線には内側からのケアも有効です。 さらに、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんによると、食事で肌機能を上げることも効果的なのだそうです。あわせて、日焼け前の紫外線対策に効果的な漢方薬について教えてもらいました。
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シミ・日焼けを防ぐには今すぐ対策
紫外線の照射量は1年の間に大きく変化します。2021年の気象庁「日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ」によると、12月から1月が一番少なく2月ごろから増え始めます。8月にピークを迎えますが、5月から9月の間はかなり紫外線量が多くなり、月ごとの差があまりありません。
この時期は日焼けをする前から、対策を強化しましょう。

日焼けを防ぐにはターンオーバーを促す食事を
紫外線のダメージを抑え、美肌を守るためには、体の内側からのアプローチも有効です。紫外線と日焼けの関係、および健やかな肌のための食材を知っておきましょう。
日焼けの仕組み
紫外線を浴びると肌の内部で黒い色素のメラニンが作られます。メラニンが紫外線を吸収し、肌内部への侵入を防いでいるのです。これが日焼けの仕組みです。
紫外線の刺激がなくなれば、メラニンの合成が抑えられるので日焼けを防ぐことができますが、部分的に過剰反応が起こり、メラニンが作り続けられるとシミになります。

ターンオーバーを促進させる
そこで、日焼け止めや日傘などで物理的に紫外線を防ぎつつ、ダメージを受けた肌の回復を早めることが美肌につながります。そのカギになるのがターンオーバーです。
ターンオーバーとは、肌細胞が一定期間で生まれ変わる仕組みのこと。ターンオーバーが健全に行われれば、肌を元のような状態にすることも可能です。
ターンオーバーを促進するたんぱく質
ターンオーバーをスムーズに進めるのに必要な栄養素の1つがたんぱく質で、たんぱく質には動物性と植物性があります。日本人は1:1の割合で摂るのが効率的だという報告もありますが、動物性たんぱく質に比べ植物性たんぱく質が不足しがちです。
植物性たんぱく質を含む食材として知られている大豆以外の食材を3つ紹介するので、食事に取り入れてみましょう。
枝豆

枝豆は大豆の未成熟豆で、たんぱく質が多い豆とビタミンが豊富な野菜の両方の特徴をもっています。たんぱく質含有量は11.7g/100g(日本食品標準成分表2020年版(八訂))。細胞の産生や再生を助ける葉酸も多く含み、肌のターンオーバーを支えます。
ゆでて食べるのが定番ですが、焼き枝豆もギュッと濃縮した味が楽しめるのでおすすめです。洗った枝豆をさやごとフライパンで焼き、両面に焼き目をつけます。さやが少し開いたら完成です。
そば

そば粉100gには、たんぱく質が12.0g含まれています(日本食品標準成分表2020年版(八訂))。ほかにも、そばに含まれるルチンには毛細血管を強化する働きがあり、血流改善が期待できます。
麺だけでなく、そば米(そばの実をゆでて、そば殻をはずし乾燥させたもの)を普段の米に混ぜて炊くと、たんぱく質を強化したごはんにすることもできます。
小豆

ゆで小豆は100g中に8.6gのたんぱく質を含みます(日本食品標準成分表2020年版(八訂))。小豆の赤色の素になっているアントシアニンは抗酸化物質で、細胞を紫外線のダメージから守ったり、紫外線のダメージを受けた細胞を修復したりする働きがあります。
無糖のゆで小豆は料理にも活用できます。スープの具やかぼちゃと合わせて煮たり、キーマカレーに使ったりしてもおいしく食べられます。
シミや日焼けには漢方も!
食事を工夫し、日焼け対策をしていても心配というときは、皮膚科でも使われている漢方薬をのむという方法もあります。
血流が悪くなったり生理などで血液が不足したりすると、肌の隅々にまで栄養が届かなくなります。すると、老廃物や毒素を排出する水分の循環が滞って新陳代謝がスムーズに行われなくなるため、肌のトラブルが生じるというのが漢方の考え方。
そのため、血液を補ったり、血流や水分の流れを促し、肌の新陳代謝をよくしたりする働きのある漢方薬を選ぶといいでしょう。

漢方薬は気になる症状の改善だけではなく、自然治癒力を高めることで心と体の理想の健康を目指せます。例えば、血流や水分の循環を改善することは、冷えやダイエットなどにも効果があります。
紫外線による肌トラブルに悩む人におすすめの漢方薬2つ
・桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
体内で滞った血(けつ)の巡りと水の流れをよくする働きのある漢方薬です。血と水の巡りがよくなることで肌の代謝が改善されて、シミの改善が期待できます。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血の不足を補い、血液の流れと水の代謝を促し、体を温める漢方薬です。やせて体力がない場合や、めまい、肩こり、足腰の冷えなどの改善にも用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
早めの対処で日焼けを防ぐ
春先から秋口までは紫外線の量が増えるので、対策の強化が必要です。紫外線のダメージから肌を守るためには体の外側からと同時に、内側からの取り組みを進めるのがおすすめです。植物性たんぱく質にも意識を向けて、動物性・植物性のたんぱく質をバランスよく摂ることができる献立を立ててみてください。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。