健康・医療

肩こりや冷え改善も!全身の血流が良くなる「循環系ストレッチ」の効果を有名フィジカルトレーナーが解説

「ストレッチ」と聞いて思い浮かべるイメージは……?(Ph/イメージマート)
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「ストレッチ」と聞くと「楽にできる運動」と思う人がいる一方で、体の硬い人の中には「無理やり伸ばされてつらかった」「拷問だ」などと思う人もいるようです。同じストレッチという括りでも、体が硬い人でも楽にできて、しかも血圧、血糖値、血管年齢、体脂肪率などにポジティブな効果をもたらすストレッチもあります。

そんなストレッチを医師監修のもと米国スポーツ医学会認定運動生理学士でもある中野ジェームズ修一さんに教えてもらいましょう。中野さんが開発したエクササイズをまとめた書籍『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)から内容の一部を改編し、紹介します。

血流をアップさせる「循環系ストレッチ」とは?

循環系ストレッチは3つの動的ストレッチを行うことで効率的に全身の血流をアップさせるものです。ここでは循環系ストレッチ1についてご説明しましょう。

循環系ストレッチの1つ「ぬぎストレッチ」のやり方(『血管を強くする 循環系ストレッチ』より)
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簡単に申し上げると、肩甲骨を大きく回す動きと下半身の大筋群を使うスクワットを組み合わせたストレッチです。肩まわりの小さい筋肉を皮切りに徐々に体を大きく動かしていき、最後は足首、ふくらはぎから血液やリンパを流します。

上半身のターゲットは、日常生活で動きの小さくなった肩と肩甲骨まわり。脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞が集まる部位なので、あっというまに体が温まるのを実感できます。

下半身はひざの曲げ伸ばしを徐々に深めつつ、下肢の筋肉のポンプ作用を働かせます。徐々に動かす筋肉の範囲を増やしながら、上から下へ、下から上へとグルグルと巡るサイクルを促すのです。

・1回5~10分でOK!肩こりや冷えなどの不調回復も

循環系ストレッチは、1回5〜10分程度実践するだけで全身の血流をアップして血糖値の変動を抑え、肩こりや冷えなどの不調を緩和しエネルギー消費量も上げる、活動量不足の人にぴったりのエクササイズです。

続けることで、血圧が下がり体脂肪率や骨密度にまで好影響が及んだモニターもいるほど健康効果が高く、動脈硬化指数の低下をもたらし血管をしなやかに強くします。これだけの効果を得られる秘密は、2つのポイントを押さえているからです。

体を大きく動かさないことの決して小さくない代償

人間の体は、走ったり物を投げたりするような「大きな動き」を繰り返せる構造になっています。しかし生活が便利になるにつれ「大きな動き」は必要なくなり、さらにIT化やテレワークの浸透によって体を動かすこと自体が激減しました。

人間の体は、走ったり物を投げたりするような「大きな動き」を繰り返せる構造になっている(Ph/イメージマート)
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この変化が私たちの体を蝕んでいたのです。

体を動かさないと血流を上げる機会が減り、余った糖や脂質が血中に残って血管という体のインフラが傷みます。生活習慣病の多くは血管が硬くもろくなることで起き、その行き着く先が心疾患や脳血管疾患、腎不全などによる突然死です。

それを防ぐためにエクササイズで「大きな動き」を実現するには、大きな関節である【1】肩甲骨を含む「肩関節」、【2】背骨で構成される「椎間関節」、【3】骨盤と大腿骨の「股関節」をよく動かす構成が必要となります。

血流がよくなる2つの秘密とは

最速で全身の血流がよくなる秘密:動きが激減した部位を狙っている

普段よく使う手先・足先より肩甲骨・脊柱・股関節を動かしたほうが、血液を押し流す筋肉のポンプ作用は圧倒的に効率よく働きます。私たちの胴体、いわゆる体幹部は前に屈めるし後ろにも反らせる、左右に曲げたりねじったりすることも可能な、よく動く構造になっていますが、現代人の多くは、ぬいぐるみや人形のように胴体がうまく動かなくなっているからです。

血流がよくなる2つの秘密とは(Ph/イメージマート)
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こうして血流がよくなり、糖や脂質の消費が増えれば、血管はしなやかになって健康維持に大いに役立ちます。

最速で全身の血流がよくなる秘密:血管の集まる部位をしっかりほぐす

循環系ストレッチのもう一つの狙いは、血管の集まる部位を動かすことです。

心臓から拍出された血液は、まず太い血管(動脈)を大量に流れ、そこから枝分かれして体の末梢まで少しずつ血液を届けてくれる毛細血管へと広がっていきます。

動脈は、道にたとえると幹線道路です。車線も行き交う車も多い幹線道路が渋滞すると、枝分かれする小路に入る車も減ります。血管もそれと同じで、大きな動脈の流れが滞ると毛細血管への流れも滞り、結果、全身の血流が低下するわけです。

ゲートが開いたかのように動脈の流れがよくなると、枝分かれした毛細血管にも血液がしっかり届く(Ph/イメージマート)
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循環系ストレッチでは、この低下した血流を復活させるために、幹線道路となる動脈が集まる部位に注目しました。首の付け根、肩まわり、わきの下や胸の前、そけい部などは大きな動脈の通り道で、多くの血管が集まります。そこを積極的に動かすと血管まわりの筋肉がほぐれ、滞っていた血液を押し流してくれるのです。

ゲートが開いたかのように動脈の流れがよくなると、枝分かれした毛細血管にも血液がしっかり届きます。そうすると毛細血管は網目状にどんどん広がり、体のすみずみまで血液が巡るようになるのです。

◆教えてくれたのは:フィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さん

中野ジェームズ修一さん
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1971年生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士。アディダス契約アドバイザリー。日本では数少ない、メンタルとフィジカルの両面を指導できるスポーツトレーナー。トップアスリートや一般の個人契約者の、やる気を高めながら肉体改造を行うパーソナルトレーナーとして数多くのクライアントを持つ。現在は大学駅伝チームのトレーナーも務めつつ、講演会なども全国で精力的に行っている。 おもな著書に、『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(だいわ文庫)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、などがある。 https://twitter.com/nakanojames

血管を強くする 循環系ストレッチ

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