日本人の多くが悩まされる腰痛。この国民病を悪化させるのも解消させるのも、すべては身近な動作にかかっている。それは「歩き方」だ。
一般社団法人自律矯正歩行協会代表理事の竹末弘実さんが語る。
「そもそも腰痛はなぜ起きるかといえば、背骨と骨盤に“ゆがみ”が生じるから。ではその原因となる背骨や骨盤を支えているのはどこかというと、足になります。すべての土台である足の関節が正常な状態を保っていればいいのですが、現代人は重い荷物を持ったり、ヒールの高い靴を履いたりと、多くの人が足にいびつな負担をかけながら歩いている。
1日3000歩ほど歩くとすると、10日で3万歩。1年で120万回も自分で足の関節をゆがめていることになる。この結果、背骨や骨盤、ひざの骨が前後左右にゆがんでしまう。つまり、原初的な要因である『歩き方』を矯正すれば、足の関節が正常に戻り、背骨や骨盤のゆがみが減り、ひいては腰痛を改善できるのです」
カイロプラクティック(人の手による筋骨格矯正施術)の専門家として、これまで延べ3万人以上の背骨を診てきた竹末さんによれば、腰痛を劇的に改善させる歩き方があるのだという。それが「距骨(きょこつ)ウオーキング」なる歩行法だ。
距骨解剖図
「距骨とは脛骨とかかとを結ぶ足首の小さな骨のこと(上図参照)。人間の足の骨は26個ほどあるのですが、距骨こそが人間の体重を支える最大の土台になっている。この骨の位置を正すことで、自重バランスが改善され、ひざ痛も腰痛も一気に解消されるというわけです」(竹末さん)
距骨ウオーキングのやり方は超簡単で、「1日5分、裸足でゆっくりと真っ直ぐ歩く」だけ。これだけで腰痛、ひざ痛に劇的に効果があるという。具体的な歩き方は、かかとから地面につけて、足全体に体重をのせ、つま先で蹴って1歩前に進んでいく。
距骨ウオーキング
ひざを真っ直ぐ伸ばし、つま先を90度上に上げてかかとからつく。足裏までつけ、ひざを伸ばしたまま体重をのせて2秒保つ。後ろ足のつま先で床を蹴り前に進む。
「1歩につき4秒かけます。1本の線の上を歩くイメージで、かかとの中心と親指をその線の上にのせるように意識することが大切。裸足になるのは足の指を解放するためです。ゆっくり時間をかけて歩くと、『姿勢筋群』といって自重のバランスを正す役割を持つインナーマッスルが働きます。これにより、足腰の関節が、正しい位置に戻ろうとするのです」(竹末さん)
室内をゆっくり歩くだけで、効果が期待できるという。
「足から首まで、人間の骨はすべて繋がっています。距骨ウオーキングで足腰のゆがみが正された結果、首の脊柱管狭窄症の症状が改善されたかたも大勢います。姿勢がよくなることで猫背も直るし、ぎっくり腰の予防にも効果は大きい」(竹末さん)
距骨ウオーキングを始めて2か月になる主婦Bさん(58才)も、その効果に驚く1人。
「長年腰痛に悩まされていて、2年前からはそこにひざ痛まで加わり、家の階段を上がるのも精一杯、という状況でした。そんな時、距骨ウオーキングに出合ったんです。実践し始めてまず驚いたのが、普段いかにバランスの悪い歩き方をしていたのか、ということ。ゆっくり歩くだけで、体が左右にふらつくんです。
1歩1歩しっかり地に足をつけることを意識して距骨ウオーキングを続けたところ、1週間もするとふらつかずに歩けるように。それと並行するようにひざ痛や腰痛が和らいでいき、2週間もするとあれほど苦労していた階段も楽に上がれるようになりました」
竹末さんが最後にこう語る。
「人間の足の関節はパズルのピースに近く、正しい位置に整えばどんな負荷にも耐えうる最強の土台になります。神様から授かった芸術品ともいえるこの構造を、最大限活用しない手はありません」
足首の小さな骨が、人の健康を一手に支えている。
イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2018年5月10・17日合併号
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