気温が高い夏なのに、手足やお腹がすっかり冷たくなっている…。このような症状があるなら、気がつかないうちに、夏の冷えが進んでしまっているのかもしれません。
医師の木村眞樹子さんによると、身近な食べ物や漢方薬で夏の冷えを改善できるそうです。そこで、夏の冷え対策に役立つ食材とおすすめの漢方薬を合わせて紹介します。
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夏に体が冷える原因は?
まず、夏の冷えがどこから来るのかをチェックしましょう。具体的に冷えの原因を挙げていきます。
冷房の効いた空間で過ごしている
主な原因の1つは、冷房が効きすぎた部屋で長時間過ごすことです。暑がりの家族が同じ部屋にいたり、オフィスの冷房の設定温度を変えられなかったりして、どうしても体が冷えたり、手足が冷たくなったりしてしまうという人は少なくないのではないでしょうか。
また、この時期は屋外と室内の寒暖差が大きくなっています。ですので、薄着で外出先から帰ってきたとき、汗をかいたまま冷房の効いた室内にいるだけで、体はたちまち冷えてしまいます。
体を冷やすものを食べている
水分量の多い果物や夏野菜、アイスクリームなどの食べ物は、体を内側から冷やす要因の1つです。
外出先などでついつい買ってしまいがちな、氷のたくさん入ったアイスコーヒーなど、冷たい飲み物も体の熱を着実に奪っていきます。
夏の冷えにおすすめの食べ物3選
夏の冷えは、体を温める食材をとることが改善につながることがあります。ぜひ食事に取り入れてみてください。
根菜類
にんじん、しょうが、山芋などの根菜は、含んでいる水分が少ないため体を冷やしにくいとされる食材です。さらに、血行をよくする効果のあるビタミンが豊富に含まれています。
なかでもしょうがは、加熱することで独自の成分「ショウガオール」が効果を発揮。胃腸を刺激し、血行を促進するので、体を内側から温めることで知られています。
発酵食品
発酵食品には、代謝に必要な酵素が豊富に含まれています。代謝を活発にするため、冷えの解消に役立ちます。納豆や味噌、漬物など、日本の食卓でおなじみの食べ物にはさまざまな発酵食品があるので、日頃から積極的にとりたいですね。
飲み物なら、日本酒や紹興酒などの発酵で作ったお酒や、紅茶・プーアル茶などの発酵した茶葉で淹れるお茶などが体を温めてくれます。
黒色の食べ物
黒豆や黒ごま、黒砂糖、昆布やひじきなどの色の黒い食材は、食べることで血の巡りをよくし、冷えを解消するとされています。
黒色の食べ物には抗酸化作用もあり、食物繊維が豊富なため、腸内環境や代謝を改善するうれしい作用もあります。腸内環境がよくなると代謝が上がり、冷えの改善にもつながります。普段の食事に加えてみてはいかがでしょうか。
冷え症改善におすすめの漢方薬2つ
東洋医学の考え方に基づいて作られた漢方薬には、冷え対策に適したものもあります。続けることで、冷えやすい体質を根本的に変えていくことが期待できます。
当帰芍薬散
月経異常や冷え症など、女性ならではの悩みがある方に合っているのが、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」です。血の巡りをよくして水分代謝を整えるので、下半身の冷え症だけではなく、生理不順などの改善にも効果が期待できる漢方薬です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、とくに手足の冷えを強く感じる方や、体力に自信のない方におすすめの漢方薬です。
熱をつくるのを手助けし、体を温めてくれます。体にゆっくりはたらきかけるので、冷えによるさまざまな症状の全体的な改善が望めます。
そもそも漢方薬とは?
症状の改善だけでなく、心と体の健康を目的としているのが漢方薬です。つまり、体質の根本改善を目指すため、繰り返す不調を根本から改善することが可能です。自然由来の生薬を組み合わせて作られているため、西洋薬に比べて副作用が少なく、体にやさしく働くといわれています。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
夏の冷えは体の内側からの解決を
夏ならではの冷えを解消するためには、体の内側からのアプローチが大切です。
体を温める食材を積極的にとり入れたり、自分に合った漢方薬をのんだりすることで、冷えやすい体質の改善を目指すことができます。ご自身に合った方法で、夏の冷えを克服しましょう。
◆教えてくれたのは:医師・木村眞樹子さん
きむら・まきこ。医師。医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならない体をつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットを活かしつつ漢方の処方も行う。 また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信もしている。