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《“ふてほど”で再注目》おニャン子クラブの「不適切ではない」名曲の数々 エモさ、拙さ、表現力…目力…わずか2年半の活動で見せた「バブル期アイドル」の存在感

神ユニットが表現する「乙女の本音」

そして最後に、おニャン子クラブの神ユニットといえば、「うしろゆびさされ組」「うしろ髪ひかれ隊」である。

うしろゆびさされ組、うしろ髪ひかれ隊のシングルコレクション(2007年発売)
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「うしろゆびさされ組」(高井麻巳子・岩井由紀子)は、『うしろゆびさされ組』(1985年)、『技ありっ!』『渚の『・・・・・』』(いずれも1986年)など、本当にかわいい。アイドルはうまい下手ではない、逆にこの拙さ、幼さがなによりも恋のモジモジ、乙女の本音を表すこともある——。彼女たちはそう教えてくれた。

特に『渚の『・・・・・』』は、浜辺のデートで砂浜につく足跡と、キスの沈黙を「・・・・・」でW表現。神がかっている!

「うしろ髪ひかれ隊」(生稲晃子・工藤静香・斉藤満喜子)は、3人とも歌が上手で、プロの目力があって、もうおニャン子とは別枠っぽかった。『時の河をこえて』(1987年)の異国情緒、好きだったなあ。

おっと苦手なはずのおニャン子なのに、ウッカリ熱くなってしまった……。

おニャン子クラブが活動したのはわずか2年半。彼女たちは、楽曲に漂う不適切さや甘酸っぱさ、少し恥ずかしくなるくらいの無防備さも含め、存在そのものが「思春期」だったのかもしれないなあ、と、今になって思えるのだ。

◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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