健康・医療

《血管の名医・池谷敏郎さんが教える》1日3回で30分間のウォーキングの運動量に匹敵!血圧改善につながる「ゾンビ体操」のやり方

医学博士・池谷医院院長 の池谷敏郎さん
医学博士・池谷医院院長 の池谷敏郎さんが簡単エクササイズ「ゾンビ体操」を指南!
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「100才まで元気でいるためには、酸素や栄養を体の隅々まで届ける血管をしなやかに保つことが不可欠。そんな“長生き血管”をつくる基本は、やはり運動なんです」と話すのは「血管先生」こと池谷敏郎さん。池谷さん考案の簡単エクササイズは、特別な道具不要で、息切れもなし! 無理なく続けられる体操で「100年血管」を目指しましょう!

高血圧は動脈硬化を引き起こす最大の危険因子

「血圧が高い状態が続くと血管のしなやかさが失われ、壁が厚く固くなっていきます。これがいわば、血管の老化。放置するとやがて血管内が傷つき、動脈硬化が進行して、脳卒中や心筋梗塞といった“血管事故”へとつながっていくのです。このような重篤な疾患を防ぐ一番の予防策が、運動なんです」(池谷さん・以下同)

体を動かすことで血流がよくなり、血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)が分泌される。このNOが血管を拡張し、圧力を和らげることで血圧が自然と下がるという。

「運動は血管を若返らせる、天然薬です」と話す池谷さん考案の体操は、猛暑でも運動が苦手でも無理なく続けられるのもポイント。日常に取り入れて、血管から若返ろう!

ゾンビ体操は血管のための最強エクササイズ

池谷さんイチオシの「ゾンビ体操」は、血流を促進し、全身に血液をめぐらせることで血圧を改善。高血圧はもちろん、糖尿病、腰痛、ストレスの予防・改善などにも効果が期待できる。

「私はトイレまでの移動時に取り入れることで、毎日欠かさず行っています」

真っすぐに立つ女性
ゾンビ体操の基本姿勢
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基本姿勢

《頭は真っすぐ前に向ける》

横から見て耳・肩・腰・足のラインが一直線に並ぶように。

《胸を開くようにして、張る》

胸を開くと肩に力が入りがち。力まずに姿勢をキープ。

《肩の力を抜く》

両腕はだらんと垂らしてOK。両肩が体の前に出ないように注意。

《お腹がへこむように力を入れる》

お腹に力を入れることで、背筋も伸びやすくなる。

《背筋を伸ばす》

背中は丸めずにスッと伸ばす。

《指の力は抜く》

指先は無理にそろえようとせずに、力を抜く。

ゾンビ体操を行う際の注意点

● 血圧が高い、起きてすぐは避ける。
● 夏場は涼しい屋内などで行う。
● 空腹時は避け、水分をしっかり摂ってから行う。
● 転倒の危険や血行がよくなりのぼせてしまうことがあるため、風呂場で行うのはNG。ゾンビ体操は入浴前が◎。
● 背中を丸めた姿勢では効果がないうえ、首や腰を痛める原因に。
● 力を入れるのはお腹だけ。ほかの部分に余計な力が入ると逆効果。
● 睡眠不足のときや体調が悪いときはやめておく。

【1】《60秒》足踏み~ジョギングしながら両腕をブラブラ

かかとを上げてその場で足踏み(慣れたらジョギング)をしながら、背筋を伸ばし、ゾンビのように両肩・腕・手の力を完全に抜いた状態で、上半身をねじる。子供が「イヤイヤ」と駄々をこねるような動きをイメージするとわかりやすい。

肩や腕の力を抜きつつ、お腹に力を入れると、上半身が支えられて基本の姿勢が保ちやすい。

上半身をねじる女性
ゾンビのように両肩・腕・手の力を完全に抜いて上半身をねじる
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上半身をねじる女性
「イヤイヤ」と駄々をこねる子供の動きをイメージ
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上半身をねじる女性
肩をやわらかく動かす
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・肩の力を抜いて両腕は自然にブラブラ
・肩をやわらかく動かして上半身をねじる
・腕の力は抜く
・このときの足踏みはかかとをつけてOK
・お腹はへこませた状態をキープ
・かかとはつけないつま先だけで足踏み~ジョギング

【2】《30秒》その場で足踏みしながら休憩

60秒の【1】動きを行ったら、30秒インターバル。両手を大きく振ってその場で足踏みしながら、呼吸を整える。

足踏みする女性を横から見た写真
呼吸を整える
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30秒後に再度の【1】動きへ。このように「イヤイヤ運動60秒+足踏み30秒」を3回繰り返すのが基本。

足踏みする女性を正面から見た写真
このときの足踏みはかかをつけてOK
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・呼吸を整える
・肩の力を抜いたまま両腕を大きく振る

【1】+【2】を1セットとして、1日3回!回数が多いほど効果アップ

《POINT》ひざはあまり高く上げなくてOK!

はじめは足踏みからスタート。慣れてきたらスピードアップして、ジョギングに近づけていく。

足踏みする女性
慣れてきたらスピードアップを
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《上半身の運動効果》

血流をよくして冷えを解消。
こりを和らげて肩の動きをスムーズに。
背筋を鍛えて正しい姿勢に。
ウエストをひねってシェイプアップ。
ポッコリお腹を引き締める。

《下半身の運動効果》

血管が開いて血流アップ。
脚から全身へ血液がめぐる。
足先に温かい血液が流れ、冷え知らずに。
ふくらはぎの運動により、リンパ液や静脈の流れが改善し、むくみを解消。
足指を強化して転倒を予防。
背部痛や腰痛の予防に。
太ももを鍛えてひざ痛を予防。

座ってできる血圧体操

猛暑が続くいまの時期に屋外で運動するのは、熱中症のリスクも。

「座ったままできる体操なら、季節を問わず行えます。足腰が痛い人や運動が苦手な人でも気軽に取り組めますよ」

座ったままでもできるゾンビ体操

上半身を動かすだけでも血流はよくなり、血圧を下げる効果が期待できる。また、肩こりや腰痛の予防、むくみの軽減、便秘の解消といった効果も。

【1】いすに浅く腰掛ける

背筋を伸ばしていすに浅く腰かける。

いすに浅く腰掛ける女性
いすに浅く腰掛ける
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・腰が反り返らないように座る
・お腹に力を入れる
・ひざは直角にして軽くそろえる

【2】《30秒》イヤイヤ運動

【1】の姿勢のまま、基本のゾンビ体操同様、両腕の力を抜いてだらんと垂らし、両肩を前後に振って揺らす。

両肩を前後に振る女性
両肩を前後に振って揺らす
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【1】〜【2】を3セット、1日3回行う

タオルギャザー運動

足の指でタオルを握って開く動作を繰り返すことで、血管が拡張・収縮して血流がスムーズに。

「足の指は、普段から意識的に動かさないと凝り固まってしまうため、動かす習慣をつけておきましょう」

【1】タオルを足の指でたぐり寄せる

タオルを足の指でたぐり寄せる女性
タオルを足の指でたぐり寄せる
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いすに座り、前方に置いたタオルに足をのせる。指を曲げたり伸ばしたりすることで、タオルをたぐり寄せる。

タオルの上に足を乗せている
足の指を動かして…
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足指でタオルをつかんでいる
ぐっとつかむ!
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【2】タオルを持ち上げて放す

10本の指でタオルをつかんだら、少し持ち上げてパッと放す。血行がよくなり、足の裏の筋肉も鍛えられる。

足指でタオルをつかんで持ち上げている
指の力を使って持ち上げる
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【1】〜【2】を3セット、1日3回行う

「暑い屋外から冷房の効いた室内へ入ったり、夜寝苦しく睡眠不足が続いたりすることも、血圧を不安定にさせる要因に。また、水分が足りないと、低血圧や血栓による血管トラブルのリスクも高まります。運動の前後は、特に水分をしっかり摂るようにしましょう!」

グーパーエクササイズ

足の指を曲げるときにジンジンするほど力を入れると、効果が高まる。足先の血行がよくなり温まるため、冷え性の改善にも◎。

「テレビを見ながら行う」など、習慣化するとGood。

いすに腰かけ、足を床から10cm程上げている
いすに腰かけ、足を床から10cm程上げる
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【1】いすに腰かけ、足を床から10cm程上げる

足の指をギュッと曲げている
足の指をギュッと曲げる
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【2】足の指に力を入れてギュッと曲げる

指を開いて“パー”にしている
指を開いて“パー”に
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【3】3秒経ったら指を開いて“パー”にする

【2】〜【3】を10回繰り返す

ふくらはぎエクササイズ

ふくらはぎは「第二の心臓」と言われるほど、血液の循環に大きな役割を果たしている。動きのポイントは、つま先もかかともめいっぱい上げること。血管がよりほぐれて、NOの分泌量も増加する。

つま先をつけてかかとを上げている
つま先をつけてかかとを上げる
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【1】つま先をつけてかかとを上げ3秒

かかとをつけてつま先を上げている
かかとをつけてつま先を上げる
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【2】かかとをつけてつま先を上げ3秒

【1】〜【2】を10回繰り返す

ボートこぎエクササイズ

肩甲骨まわりの筋肉をほぐして血行を促進するエクササイズ。2セット目以降は目線が下がりやすくなるため、見るポイントを決めておくと行いやすい。上を見上げる際に痛みがある場合は、無理をしないこと。

斜め上に顔を上げる女性
座って斜め上に顔を上げる
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【1】座って斜め上に顔を上げる

背筋を伸ばし、ビルの5階程の高さを見上げるイメージで座る。首が前に倒れないよう首筋も伸ばす。

両手を突き出す女性
両手を突き出す
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【2】両手を突き出す

両手を目線の先に向けて突き出す。手は「グー」の形に握る。

伸ばした両腕を引く女性
伸ばした両腕をゆっくり引く
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【3】伸ばした両腕をゆっくり引く

腕を引いて左右の肩甲骨を寄せ合うように胸を開き、肘を後ろに引く。肘を引いたときの高さが、乳頭と同じくらいになるように意識するとベスト。

両腕を引く女性
横から見ると…
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目線や頭の位置が下がってこないように注意。

【2】〜【3】を1セットとして、10回繰り返す

いつでもどこでも!血圧体操

「“ながら”や、すき間時間にできる簡単体操も。『ほぐす』ストレッチだけでも充分効果的です」

気軽に実行できるので、コツコツ積み重ねていけば「100年血管」も夢じゃない!

ふくらはぎのストレッチ

「ふくらはぎの筋肉には、血液を心臓に押し戻すポンプのような役割があります」。ふくらはぎの筋肉がほぐされ鍛えられると、このポンプ作用が活発になり、全身の血流が改善される。

壁に向かって立つ女性
壁に向かって立つ
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【1】壁に向かって立つ

右脚を前、左脚を後ろにして、前後に開く。両足の裏は床にしっかりとつけておく。

両手を壁にあて壁を押す女性
両手を壁にあて壁を押す
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【2】両手を壁にあて壁を押す

壁を強く押しながら右ひざをゆっくり曲げ、左のふくらはぎを伸ばして10秒キープ。かかとは床につけたまま。左右の足を入れ替え同じように行う。

左右の脚を入れ替えながら、3回繰り返す。

「朝は血管が収縮し血圧が上がりやすくなっているので、運動をすると血圧や心拍数が一気に上がってしまう恐れも。血圧が高い人や寒い時期は、特に朝の運動は控えましょう。体を動かすなら、入浴前や食後30分以内が効果的です!」

手の血管をほぐすストレッチ

両手の指を組み、力を入れてからほどくだけでも血行は促進できる。

「緊張と拡張を繰り返すことで血流がよくなります。血管の内側から血管をマッサージしているようなイメージですね」

手を組んでギュッと握る女性
手を組んでギュッと握る
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【1】手を組んでギュッと握る

右手と左手の指を交差させて組み、力を入れる。

手を握っている
指の間がジンジンするくらいしっかりと手を握る
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指をほどいたときに、指の間がジンジンするくらいしっかりと手を握るのがポイント。

手をブラブラさせる女性
手の力を抜いてブラブラさせる
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【2】手の力を抜いてブラブラさせる

10秒経ったら、握った手をパッとほどき、ブラブラさせる。

【1】〜【2】を3セット、10回繰り返す

寝たままできるゾンビ体操

手首と足首を上下に動かすだけの体操だが、血流がよくなり頭も冴える。寝たまま行うため体力がない人でもできるが、こむら返りを起こさないように、はじめはゆっくりと行うのがおすすめ。

あお向けに寝る女性
あお向けに寝る
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【1】あお向けに寝る

両腕・両脚は真っすぐ伸ばす。手は体の横に置く。

仰向けに寝、手首・足首を立てる女性
つま先は体に引き寄せるように立てる。ふくらはぎの筋肉が伸びているのを感じられればOK。手首は直角になるくらい上げる
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【2】手首・足首を立てる

あお向けのまま、手首と足首を上に向ける。

あお向けに寝る女性
手首・足首を倒す
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【3】手首・足首を倒す

手のひら・足の裏を床につけるように倒す。【2】~【3】の動作を繰り返して「パタパタ」と手足を動かす。

【2】〜【3】を10セットを目安に行う。

さびしんぼう体操

ギュッと小さくなることで体温が上がり、その後力を抜くと体の深部から体温が下がる。寝る前に行えば睡眠の質が改善。

「リラックスすることも、血管ケアには大切な要素です」

座って両手でひざを抱える女性
座って両手でひざを抱える
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【1】座って両手でひざを抱える

床や布団の上に座り、額をひざにつけるように体を丸める。両腕にギュッと力を入れる。

大の字に横たわり両手をブラブラさせる女性
大の字に横たわり両手をブラブラさせる
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【2】大の字に横たわり両手をブラブラさせる

10秒経ったら力を抜いて大の字に横たわり、両手をブラブラと揺らす。

【1】〜【2】を3回繰り返す。

◆教えてくれたのは:医学博士・池谷医院院長 池谷敏郎さん

白衣の男性
医学博士・池谷医院院長の池谷敏郎さん
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臨床の現場に立ちながら、内科・循環器科の専門医としてテレビなど多方面で活躍。著書に『高血圧、脳卒中、心筋梗塞をよせつけない! 「100年血管」のつくり方』(青春出版社)など多数。

撮影/平林直己 ヘアメイク/千葉智子(ロッセット) 取材・文/番匠 郁

※女性セブン2025年8月21・28日号

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