ここ数年、記録的な猛暑となる日本の夏。単なる“夏バテ”で済む話ではなく、命にかかわる問題になっている。そこで、猛暑に役立つ夏バテ対策をピックアップ。食事から、入浴、睡眠、運動まで、夏バテを予防・解消する方法を一挙にご紹介!
夏バテとは?その原因は?
夏バテとは、夏場に起こりがちな体調不良の総称のこと。 “体のだるさや重さ”“疲れが取れない”“やる気が出ない”“食欲がない”といった不定愁訴の不調状態をさす。
熱帯夜にはなかなか寝つけず疲れが残ったり、過度の冷房で体が冷えると、肩こりや頭痛になる。これらが、いわゆる夏バテだ。
「室内外で寒暖差が大きすぎると体温調節機能が充分には働かず、自律神経の乱れで胃腸の働きも低下します。これに冷たい物を好む夏の食習慣や、暑いからと買い物にも出ず、ひきこもって運動不足になりがちな生活習慣も、現代の夏バテに拍車をかけています」(医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さん)
イラスト/野田節美
夏バテは入浴で解消する!そのポイントとは?
夏はお風呂をシャワーだけで済ます人も多いが、浴槽にはいってリラックスするのがおすすめ。夏バテ回復の入浴にはポイントがある。
【入浴のポイント】
・入浴は朝でなく夜に。寝る90分前までに済ませると寝つきもよくなる。
・暑い日ならお湯の温度は38~40℃のぬるめで。入浴時間も短めで。
・入浴中はこまめに水分補給を。白湯や常温の麦茶などを飲みながらつかるのもいい。
・お風呂のふたは半分しめた方が蒸気が逃げず、温まりやすい。
・アロマオイルや清涼感のあるハッカ油などを使ってリラックス。
・肩までつかる。※心臓病の人などは半身浴でもよい。
産業医としても活動する医学博士・健康科学アドバイザーの福田千晶さんは、夏は暑さで汗をかく一方、冷房で想像以上に体がこわばっている女性が多いと話す。
「お腹に手を当てたときに、手の温かさを気持ちいいと感じたり、アキレス腱を手で触ったときに足が冷たいと思った人は、浴槽にお湯をためてつかるようにして」
副交感神経を優位にしてリラックスするには、お湯の設定温度を、体温より少し高い38~40℃にして。肩までつかって全身を温めることで、血行が促進され、疲労回復につながり、冷えによるこわばりをほぐすことは、心地よい熟睡への助走タイムとなる。
「血行促進には炭酸の入浴剤を利用するのも手。好みのアロマオイルを湯船に1~2滴たらして気持ちを落ち着かせたり、ハッカ油を同様にたらして清涼感を楽しむのもいいでしょう」(福田さん)
気をつけたいのは、汗をかくため、入浴前後にコップ1杯程度の水分補給を心がけること。入る時間は、朝よりも夜の就寝90分前までに。
イラスト/小野寺美恵
→夏バテを解消する入浴法の詳細&お風呂でできるストレッチはコチラ
夏バテ対策の熟睡へ導く部屋作りのコツ
記録的熱帯夜でも、途中で起きずに朝までぐっすり眠るコツとは――。
「夏バテ回復に重要なのが、睡眠の質と量とリズムです。ぐっすりと、充分な睡眠時間を毎日同じ時間帯にとることが、良質な睡眠につながる。そのためにはエアコンはタイマーにせず、一晩中つけっ放しにして寝るのがここ数年来、新常識となりました」
こう話すのは、睡眠改善インストラクターの資格を持ち、管理栄養士として食事と睡眠の観点から健康と美容にアプローチする「睡食健美」を提唱する篠原絵里佳さんだ。
就寝時のエアコン設定温度は26℃が基本。布団に入る1~2時間前からつけておき、寝室全体を冷やすこと。
パジャマは吸湿性が高くて袖口が広く、体を締めつけないものを。エアコン使用時はタオルケットよりも布団をしっかり掛けて寝るのが、夜中に目を覚まさないための秘訣だという。
「エアコンをつけたまま寝ると起きたときに体がだるくなると心配する声もありますが、酷暑の場合はやや低いくらいの設定温度の方が安定して眠れることが実証されています」(篠原さん・以下同)
もし寒いと感じたなら、必要に応じて温度や風量の微調整をして。
屋内熱中症の警戒ラインは室温28℃、湿度70%。先に紹介した就寝時の26℃設定とわずか2℃の違いでも熱中症になるリスクがあり、温度と湿度両方に気を配る必要性があることがわかる。
「とりわけ大事なのは、寝入りばなに70~120分のサイクルで訪れるノンレム睡眠。ここで成長ホルモンが分泌され、細胞が生まれ変わるターンオーバーも行われ、疲労は回復します」
レム睡眠中はまぶたの下で眼球が動くのに対し、ノンレム睡眠は副交感神経が優位になって脳の活動も低下し、まぶたの下の眼球も動かない。
「深い眠りのノンレム睡眠に入るのに、寝酒やベッドでのスマホはNG。オレンジ色の明かりの下で読書するくらいがちょうどいい。就寝中に汗で水分が失われるので、寝る前にコップ1杯の水を飲むように心がけて」
ストレッチで夏バテ対策!体を動かして気力と体力を取り戻す
日頃の運動不足に加え、クーラーによる冷えで、肩こりなど体がこり固まってしまっている人も。そんな体を手軽にほぐすことができるストレッチを、医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんが教えてくれた。
まずは深呼吸でリラックス。
【1】 足を肩幅に開いて立ち、両腕を肩の位置まで上げる。手のひらは上に向ける。
【2】 息を吸いながら、片方の腕を、弧を描くように反対側へ曲げていく。上半身を動かして、脇、肩、腕をしっかり伸ばす。
【3】 同じように、両腕をすぐ反対側にスイングさせる。この動作を左右交互に各10回行う。
続いて、肩と心をほぐし、ゆるめるストレッチ
【1】 ひざ立ちになり、体の正面で腕を組む。体の力を抜いて、軸を真っ直ぐにするのがポイント。いすに座って行ってもOK。
【2】 両腕を組んだまま、横にスイングさせる。腕の重みを利用して、ひじをできるだけ後ろへ引くとよい。
【3】 同じように、両腕をすぐ反対側にスイングさせる。この動作を左右交互に各10回行う。
イラスト/野田節美、小野寺美恵
夏バテを解消するための食べ物の選び方
暑い夏はさっぱりしたそうめんの他、アイスクリームや清涼飲料水、ビールなどが好まれる。しかし、これが夏バテを増幅させてしまうと管理栄養士の篠原絵里佳さんは話す。
「これらは、まったく異なる見た目ですが、どれも糖質を多く含みます。夏は食欲不振でそうめんだけといった単品メニューになる人が多いですが、こうした食事の繰り返しは、糖質の過剰摂取につながります。しかも、糖質を代謝するのに必要不可欠なビタミンB1が、これらの食品を食べることの多い夏は体内で消耗しがちになるため、ビタミンB1不足で糖を代謝できません。
そこで糖質と一緒にビタミンB1を多く含む豚肉や枝豆、そばなどを努めて摂るようにするのも、夏バテからの回復には非常に有効です」(篠原さん)
他にも、胃腸の働きを助けるネバネバ食材や、食欲増進や疲労回復に効く酸っぱい食材、野菜なら抗酸化力の強い色の濃いものやビタミンA・C・Eを含む緑黄色野菜、ビタミンB1の吸収をよくするアリシンを含む玉ねぎやにんにくなどの食材を組み合わせるメニューがおすすめだという。
夏バテに効く栄養素を含むおすすめ食材!
《糖質の代謝に不可欠な「ビタミンB1」食材》豚肉、うなぎ、胚芽米、枝豆、そば、豆類、レバー
《胃腸の働きを助けてくれる「ネバネバ」食材》モロヘイヤ、オクラ、山いも、納豆、芽かぶ
《食欲増進・疲労回復に効く「酸っぱい」食材》クエン酸を多く含む柑橘類、パイナップル、キウイフルーツ、梅干し、いちご、レモン
《抗酸化力の強い「色の濃い」野菜》トマト、赤ピーマン、ピーマン、ゴーヤー、オクラ、枝豆、かぼちゃ
《ビタミンB1の吸収をよくする「アリシン」を多く含む食材》ねぎ、玉ねぎ、にんにく、にら
ピーマンが紫外線対策にも!「チンジャオロースー」レシピ
「ABC HEALTH LABO(エービーシー ヘルス ラボ)」に、「ピーマン」のレシピを教えてもらった。中華の定番メニューは、ごはんにもお弁当にもぴったり。牛肉に含まれる「カルニチン」には、脂肪燃焼の効果が。
2色のピーマン入りだから、栄養価も見た目もばっちり。ピーマンの香り成分「ピラジン」は血行促進に役立ち、代謝アップに効果が期待できる。また「ビタミンA」や「ビタミンC」が豊富なので、夏バテや紫外線の対策に◎。
カロリー…289kcal(1人分) 調理時間…20分
《材料》(2人分)
牛もも肉(厚さ7mm)…100g 卵(溶いたもの)…1/4個分 片栗粉…小さじ1 サラダ油…小さじ1 サラダ油…小さじ1 ピーマン(幅3〜5mmのせん切り)…80g 赤ピーマン(幅3〜5mmのせん切り)…20g たけのこ(水煮)…40g 白ねぎ(みじん切り)…10g しょうが(みじん切り)…4g サラダ油…小さじ1/2
【A】しょうゆ…小さじ1/2 酒…小さじ1/2 塩・白こしょう…各少々
【B】しょうゆ…小さじ1 酒…小さじ1 砂糖…小さじ1/2 オイスターソース…小さじ1/2 鶏がらスープの素…小さじ1/8 水…小さじ2 塩・白こしょう…各少々 片栗粉…小さじ1/2 ごま油…小さじ1/4
《下準備》
・牛肉は幅3~5mmに切り、加熱調理する直前に【A】をもみ込み、溶き卵、片栗粉、サラダ油を順に加え混ぜておく。
・たけのこは、熱湯でさっと下茹でしてから水気を切り、太めのせん切りにしておく。
・【B】は合わせておく。
《作り方》
【1】フライパンにサラダ油を熱し、牛肉をほぐしながら入れて、焼き色をつけて取り出す。
【2】粗熱をとったフライパンにサラダ油、白ねぎ、しょうがを入れて、いい香りがするまで弱火で炒める。
【3】ピーマン、赤ピーマン、たけのこを加えて、強火で手早くさっと炒める。
【4】【1】の牛肉を戻し、再度よく混ぜ合わせた【B】加えて、炒め合わせる。
【5】火を止め、ごま油をまわし入れる。軽く混ぜ合わせ、器に盛りつける。
ついでに夏太りも解消!「塩いり鶏のピーマンあえ」レシピ
”やせおか”シリーズ第6弾の書籍『全部レンチン!やせるおかず作りおき2』(小学館)から、暑さ疲れからの回復に役立つメニュー「塩いり鶏のピーマンあえ」をご紹介。
保存期間…冷蔵4、5日間
《材料》(2人分)
鶏胸肉(ひと口大のそぎ切り)…1枚(250g) ピーマン(細切り)…3個 顆粒コンソメ…小さじ1 塩・こしょう…各少々 オリーブオイル…小さじ2 酢…大さじ2
《作り方》
【1】 ピーマンは保存容器に入れておく。
【2】 耐熱ボウルに鶏胸肉を入れ、顆粒コンソメ、塩、こしょう、オリーブオイル、酢をかける。ふんわりラップで3分間加熱する。
【3】【2】が熱いうちに、汁ごと【1】に加え混ぜる。
疲労回復効果満点!「サーモンアボカドもやしレモンの生春巻き」レシピ
食物繊維が豊富な「大豆もやし」は、ダイエットにうれしい低カロリー野菜。疲労回復に効果が期待できる「アスパラギン酸」を含むので、夏バテ中にも◎。さらに、これにレモンをふりかけると、保存期間がアップする上、疲労回復効果も倍増するとか!
そこで、さっぱりおいしい「もやしレモン」を使ったレシピを、スーパーフードマイスターの中田澄美香さんに教えてもらった。
《材料》(2人分)
もやしレモン…100g 刺身用サーモン(1cm幅)…100g アボカド(スライス)…1/2個 イタリアンパセリもしくは、にら…1把 ライスペーパー…7、8枚 スイートチリソース…適量
《作り方》
【1】ボウルに40度ほどのお湯をはる。ライスぺーパーを浸し、少し硬いうちに取り出す。
【2】まな板にライスペーパーを広げ、もやしレモンを敷いてひと巻きする。
【3】【2】にサーモン、アボカド、イタリアンパセリを置き、ライスペーパーの両端をたたんでクルクルと巻く。
【4】 カットして盛りつける。お好みでスイートチリソースをつけていただく。
→ほかにもたくさん!さっぱりおいしい「もやしレモン」レシピはコチラ
スタミナつけて代謝UP「ゴーヤーチャンプルー」レシピ
肉に豊富なたんぱく質は、エネルギー消費に欠かせない筋肉の元。たんぱく質をたっぷり摂って、素材の組み合わせで痩せ効果もアップ。調理法でカロリーダウンして、肉を賢く味方につけてダイエットしよう! 糖質の代謝を上げるビタミンBが豊富な豚肉を使ったレシピを料理研究家の井原裕子さんに教えてもらった。
《材料》(2人分)
豚小間切れ肉・木綿豆腐…各150g ゴーヤー…1/2本 玉ねぎ…1/4個 卵…1個 サラダ油…大さじ1/2 塩…小さじ1/3 こしょう…少量 かつおぶし…1袋
《作り方》
【1】木綿豆腐は水切りする。ゴーヤーと玉ねぎは薄切りにする。
【2】フライパンにサラダ油を熱し、豆腐を手で崩しながら入れ、こんがりするまで中火で焼く。
【3】 【2】の豆腐を端に寄せ、豚肉を加えて炒める。
【4】 【3】の肉の色が変わったら、玉ねぎとゴーヤーを加えて炒め合わせ、油がなじんだらふたをして1分蒸し焼きにする。
【5】 【4】に塩、こしょう、かつおぶしを加えて混ぜ、溶いた卵を流し入れて炒め合わせる。
貧血予防に役立つ「あさりたっぷりトマトスープ」レシピ
「ABC HEALTH LABO(エービーシー ヘルス ラボ)」に、「トマト」のレシピを教えてもらった。ビタミンCやB-カロテン、カリウムなどを豊富に含む「トマト」は、うまみたっぷりの「あさり」と味の相性が抜群。
「あさり」は、タウリンを豊富に含むため、血中コレステロール値を下げ、肝機能の強化、二日酔いの予防に役立つとか。
ビタミンB12は貝類の中でトップクラスの含有量を誇り、鉄も含むので、貧血予防にも効果が期待できる。相乗効果でうまみ倍増のスープ、夏バテで元気を出したいときにいただいて。
カロリー…123kcal(1人分) 調理時間の目安…25分
《材料》(2人分)
あさり(殻つき)…200g オリーブオイル…小さじ1 にんにく(みじん切り)…5g ベーコンスライス(みじん切り)…2枚 玉ねぎ(1cm角)…40g カットトマト(水煮)…200g 水…150cc コンソメ(顆粒)…小さじ1 塩…少々 黒こしょう…少々 パセリ(みじん切り)…適量
《下準備》
・平たい容器に500ccの水に大さじ1の塩を加えた塩水(分量外)を入れ、あさりをつけ、空気穴を開けたアルミホイルでふたをして砂出しする。
《作り方》
【1】鍋にオリーブオイル、にんにく、ベーコンを入れ熱し、弱火でよい香りがするまで炒める。
【2】あさり、玉ねぎを加える。玉ねぎがしんなりしたら、カットトマト、水、コンソメを加えて加熱する。
【3】沸騰したらアクを除き、中火でさらに5分ほど煮る。
【4】塩、黒こしょうで味をととのえる。
【5】器に盛りつけ、パセリを散らす。